研究課題
珊瑚礁周辺の魚介類によって引き起こされるシガテラ中毒は、世界最大規模の自然毒食中毒である。その原因毒シガトキシン類は、天然からは極微量しか得られず、13個のエーテル環が梯子状に連なった3ナノメーターの巨大分子である。本年度の本研究の目的は、第二世代シガトキシン合成法を更に改良しながら、CTX3C以外のシガトキシン類の全合成、抗体作製、イオンチャネル阻害原理解明である。1)第二世代CTX3C全合成法を更に効率的にして、CTX3Cを学際的関連諸科学の研究用に供給できるようになり、新しい知見が得られた。即ち、電気生理学研究により、CTX3Cが、電位依存性ナトリウムチャネルのゲート機構の活性化過程に著しい影響を与えるばかりでなく、不活性化過程にも強く作用し、不活性化からの回復を著しく遅らせることを世界で初めて明らかにした。2)第二世代シガトキシン合成法におけるG環構築の選択性を改善する方法を開発した。これによってシガトキシン類の中で最強毒と言われている51-hydroxyCTX3Cの全合成を検討し、量的供給を可能にした。3)CTX3C全合成中間体の生物活性試験により、F環が開環した構造の化合物の中に、ナトリウムチャネルに結合するが、マウス毒性が低い化合物が存在することが分かった。4)シガトキシン類を更に効率的に合成するためには、左セグメントABCDE環部の新しい収束的合成法の開発が必要である。ラジカル反応を鍵とする、より効率的で再現性の高いCTX3CのABCDE環部新規合成法の開発に成功した。この方法は、環状ポリエーテル類の一般性の高い合成法になりうるものである。5)M環上に水酸基を有するHIJKLMフラグメントに対する抗体の作製に成功した。51-hydroxyCTX3Cの特異的イムノアッセイに利用できることを証明した。
すべて 2004
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