研究概要 |
1.塩類細胞の分化増殖はエラの形態形成と密接な関係にある。サブトラクションクローニングで差のあるクローンとして拾えてきたcDNAのうち細胞の骨格維持や形態形成に関わると思われるものについて解析を進め,塩類細胞と並びエラの主要細胞であるPillar cellに関し,形態と浸透圧調節の関連で興味深い結果を得,新しい仮説を提唱した。 2.動物生理学分野の重要課題として残されている淡水型塩類細胞の機能を分子レベルで明らかにするために,モデル動物として遺伝学的解析が可能なゼブラフィッシュを用いて,塩類細胞をGFP (green fluorescent protein ; Na-K-ATPaseのプロモーターを利用)で標識することに成功し,発生の時間経過を追って塩類細胞がどこにどのように現れてくるかを明らかにした。すなわち,発生初期では卵黄膜を中心とする体表に散在し,発生4〜5日目でエラが出来始めると,エラに多数の塩類細胞が出現することが明らかになった。蛍光色素 Mito Trackerでミトコンドリアを可視化し,MRC (mitochondria-rich cell ; M^+)を同定して上記GFP陽性細胞(G^+)と比較したところ,両者が重なる細胞(M^+/G^+)と重ならない細胞(M^+/G^-)があり,淡水型塩類細胞にも2種類存在することを初めて確定することに成功した。M^+/G^+型とM^+/G^-型細胞の存在比は,ほぼ1:1であった。M^+/G^+型とM^+/G^-型細胞に特異的に発現する分子群の同定を通して,これら2種の塩類細胞の機能が明らかになれば,この分野の研究が飛躍的に進展するものと期待される。
|