研究概要 |
1.淡水型塩類細胞の分類に成功した昨年度の仕事に引き続き,本年度はゼブラフィッシュを用いてそれらの機能分担を明らかにした。いずれもイオン輸送に必要なエネルギーを供給する必要性からミトコンドリアが非常に多いという共通の性質を有するが,駆動力を供給するATPaseに関しては,片方はNa-K-ATPase,もう一方はH-ATPase(V-ATPase)が多いという際立った違いがあることが分かった。Na感受性の蛍光色素Sodium Greenを用いてNaの動きを追跡したところ,H-ATPase型の塩類細胞がNaを取り込んでいることが明らかになった。Naの取り込みが可視化できたこと自体が画期的であるが,長らく待たれていたNa取り込み細胞の同定はこの分野の研究の進展に大きく貢献すると期待される。阻害剤や抗体を活用してNaイオンの取り込み機構を解析中である。 2.ミトコンドリアが多いという塩類細胞の特徴にヒントを得て開始したミトコンドリアの形態形成因子に関しても,新規の融合因子と分裂因子を見つけることに成功し,それぞれMARCH5及びMitodividinと命名した。 3.塩類細胞サブタイプ間のサブトラクションクローニングの結果拾えてきたファミリー分子の解析の一貫として,細胞内トラフィッキングの調節に関わる新規因子を見つけ,MARCH2及びMARCH3と命名した。蛍光標識したトランスフェリンの取り込み等を追跡することにより,MARCH2&3はリサイクリングエンドゾーム系で働くユビキチン化酵素で,細胞内トラフィックの重要な制御因子であることを明らかにした。
|