研究課題/領域番号 |
14104003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深田 吉孝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80165258)
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研究分担者 |
岡野 俊行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (40272471)
小島 大輔 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (60376530)
広田 毅 東京大学, 大学院理学系研究科, 拠点形成特任教員 (50372412)
和田 恭高 東京大学, 大学院・理学系研究科, リサーチフェロー (90376559)
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キーワード | サーカディアンリズム / クリプトクローム / リン酸化 / GSK-3β / 視細胞 / G蛋白質 / ファルネシル化 / 明順応 |
研究概要 |
交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。 (1)マウスクリプトクローム(mCRY)は、時計中枢の視交叉上核や末梢の肝臓において蛋白質量が概日リズムを示す時計遺伝子産物である。本研究ではmCRY2のSer557のリン酸化状態を認識する抗体を自作し、マウス視交叉上核と肝臓でSer557がリズミックにリン酸化されることを見出した。肝臓でのリン酸化のピークはmCRY2蛋白質量のピークより4時間ほど先行し、このリン酸化はmCRY2の分解に関与する可能性が示唆された。事実、Ser557がリン酸化されたmCRY2はGSK-3βによってSer553がリン酸化され、プロテアソーム系で分解された。GSK-3β活性が肝臓で概日変動を示す事を考え併せると、Ser557とSer553の逐次リン酸化はmCRY2蛋白質の分解を介して時計機構に寄与していると考えられた。 (2)網膜桿体視細胞の光情報伝達を担うG蛋白質(Tα/Tβγ)のγサブユニット(Tγ)はファルネシル化されるため、ゲラニルゲラニル化されている他のG蛋白質γとは性質が異なる。Tγのファルネシル化が視細胞の光シグナル伝達に果たす役割を理解するため、ゲラニルゲラニル化Tγを持つノックインマウスを作成した。変異型Tβγの桿体外節膜への親和性は、野生型と比較して顕著に増大し、これに対応して変異マウスの視細胞では、光照射に伴うTβγの外節から内節への細胞内移動が著しく抑制された。暗順応状態での野生型と変異マウスの単一視細胞の光応答には差が認められなかった。ところが、100luxの順応光を10分間照射した後に網膜電図を記録すると、野生型マウスの光応答は暗順応状態の15%まで減弱して明瞭な明順応を示したのに対し、変異マウスにおいては光応答の減弱が40%にとどまった。以上の結果より、Tγの選択的なファルネシル化はG蛋白質の光依存的な細胞内移動に重要な役割を果し、桿体の光感度調節(明順応)に寄与していると考えられた。
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