研究分担者 |
滝井 健二 近畿大学, 水産研究所, 教授 (60197225)
宮下 盛 近畿大学, 水産研究所, 教授 (80088658)
村田 修 近畿大学, 水産研究所, 教授 (70088657)
細川 秀毅 高知大学, 農学部, 教授 (40036744)
田中 克 京都大学, フィールド科学教育センター, 教授 (20155170)
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研究概要 |
2002年完全養殖に成功したクロマグロは体重12kgにまで達し,成長は2001年種苗生産したものより優れていた。成熟・産卵に関しては,奄美大島における3歳魚の♀および♂生殖腺指数は,それぞれ7月および5月に高い個体が出現したが,排卵の痕跡はなく成熟精子は年間を通して存在すること,奄美大島の5歳魚の自然産卵は串本の12・13歳魚より1ヶ月程度早く,放流・養殖種苗の量産には奄美大島における飼育・採卵が有利であることなどが分かった。また,精子の凍結保存に今回開発したマサバ・サワラの方法が応用できるとともに,前期仔魚の沈降死はその比重変化から水温23℃・塩分濃度34.5pptの飼育で防止できる可能性も示唆された。初期発育・種苗生産に関しては,ふ化仔魚の卵黄白濁・破裂を引き起こす寄生虫はSyndinids属の鞭毛虫であり,仔稚魚期の腸内細菌相は既報の海産魚と同様にVibrio属細菌が優占していた。また,仔稚魚期では水温24〜26℃・塩分濃度30pptで高い生残率の得られること,ふ化後50日頃から多発する衝突死の一因として,光刺激によるストレス応答とエネルギー出力機能の亢進することなどが示唆された。一方,体長と耳石径の成長は二次曲線で回帰したが,耳石輪紋の形成は不明瞭で飼育条件に影響されることも伺えた。栄養素代謝・飼料開発に関しては,クロマグロ稚魚に対するマアジ肉エキスの摂餌刺激効果は,アラニン,グルタミン酸,リジン,タウリン,ヒスチジンなどのアミノ酸とイノシン酸によるが,味覚の電気生理学的応答からイノシン酸が中心的な役割を持つことが示唆された。また,魚粉に対するクロマグロ稚魚の消化能は低く,配合飼料の消化吸収に長時間を要して摂餌量や成長は低下するが,肝臓・幽門垂を含む腸組織を肥大させるなど適応して,各種効率を高く維持することが示唆された。
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