研究課題
基盤研究(S)
オレキシンは1998年に申請者らによって同定された神経ペプチドである。オレキシンは逆行性薬理学的手法により同定されたため、その生理的役割が全く分かっていなかった。オレキシンの脳室内投与等の行動実験により、摂食行動を惹起する作用があることが判明した。さらにプレプロオレキシン遺伝子欠損マウスおよびオレキシン2受容体欠損マウスがナルコレプシーによく似た症状を示した事から、オレキシンが摂食行動だけでなく、睡眠覚醒調節においても重要な役割を担っている事が明らかになった。睡眠覚醒調節に関わる神経回路を同定するために、オレキシン神経細胞への入出力系について電気生理学的および形態学的解析を行なった。オレキシン神経細胞が視床下部外側野にまばらに存在する事から、その同定のためにトランスジェニックマウスを作成した。オレキシン神経細胞特異的に緑色蛍光タンパク質を発現するマウスを用いて電気生理学的解析を行なった結果、オレキシン神経細胞がノルアドレナリン、セロトニンによって抑制される事を見いだした。また、オレキシン神経細胞特異的に逆行性トレーサーを発現するトランスジェニックマウスを用いてオレキシン神経細胞への入力経路を形態学的に解析した。その結果オレキシン神経は扁桃体などから強い入力を受けている事や、前脳基底核のアセチルコリン神経細胞から興奮性の入力を受けている事が明らかになった。これらの結果により、オレキシン神経細胞を中心とした睡眠覚醒や摂食行動に関わる神経回路が明らかになった。
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