研究概要 |
NK-T細胞は脂質代謝の中心的臓器である肝臓に多く分布すること、またNK-T細胞はメインストリームT細胞が認識するペプチド抗原ではなく、疎水性脂質抗原をCD1d拘束性に認識することが、これまでの研究で判明した。近年動脈硬化症の病態が、血管壁における炎症によって進展することが広く認識されてきた。従って、脂質抗原に反応するNK-T細胞が、動脈硬化症病巣形成に何らかの役割を果たすことが、強く示唆された。今年度は、種々の実験システムを用い、NK-T細胞が動脈硬化症促進的に働くことを明らかにした(Blood 104,2051,2004の表紙を飾る)。すなわち、正常B6マウスと、B6背景のCD1dノックアウト(KO)マウスに、動脈硬化食を与えたところ、病巣面積が、メインなNK-T細胞を欠くCD1d KOマウスで有意に減少することを明らかにした。また、低比重リポ蛋白レセプター(Ldlr)KOマウスをB6、またはCD1d KOマウス骨髄で再建した骨髄キメラを用いた実験で、実際NK-T細胞欠損が、動脈硬化病巣の縮小と、病巣に浸潤するマクロファージやIFN-γ産生T細胞数の減少につながることを証明した。さらに、apoE KOマウスのNK-T細胞をα-GalCerで活性化すると、動脈硬化症が増悪することも示した。また実際、動脈硬化病巣にNK-T細胞が浸潤すること、これらNK-T細胞が酸化LDLに反応して、IFN-γを産生することをin vitroで証明した。今年度はさらに、NK-T細胞がオステオポンチンを産生し、Con A誘導性肝炎発症を始動することを世界で初めて明らかにした(Immunity 21,539,2004)。
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