本研究では、申請者が開発した球状蛋白質の相互作用解析法である交差飽和法や動物細胞を用いた発現系による蛋白質の安定同位体標識法などの研究成果に基づき1)膜蛋白質に適応可能なNMR戦略法の確立と2)イオンチャネルとイオンチャネルブロッカーの相互作用解析を行う。本年度は1)に関して研究を行った。我々は、新規NMR測定法である交差飽和法により、分子量50K程度の蛋白質複合体の相互作用を解析してきた。しかし。交差飽和法を分子量100K以上の蛋白質複合体に適用しようとすると、複合体のNMRシグナルが広幅化し観測できず、界面残基の同定ができない。この限界を克服するため、以下の測定法を開発した。まず、リガンド蛋白質を受容体蛋白質に対して過剰量加え、リガンド蛋白質の受容体蛋白質結合状態と非結合状態間の交換系を作り出す。このような条件下で交差飽和法を適応すれば、非結合状態のリガンド蛋白質由来のNMRシグナルを観測することによりリガンド蛋白質の受容体結合界面を精度良く同定できる。実際に、マウスIgG(分子量150K)を受容体蛋白質として、proteinAのBドメイン(FB)をリガンド蛋白質として取り上げ、実験を行ったところ、界面の同定に成功した。
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