研究概要 |
本研究はRLGS法で検出された60個の異常DNA断片について解析を行なうものである。まず、既にクローニングしていた8個の未解析DNA断片から7個の遺伝子を同定した。うち4個が新規であり、3個が既報ではあったが異常DNAメチル化については未だ解析されていない遺伝子であった。新規遺伝子のうち3個については、全長遺伝子のクローニングにも成功している。また、この3個(便宜上A,B,Cと名付けている)すべてで、遺伝子発現の抑制とプロモーター領域の異常なメチル化を認めた。Aはドメイン検索から、アポトーシスに関連する機能を有することが推察されており、発現ベクターを構築して癌細胞株に導入したところ中等度の細胞増殖抑制作用が認められた。セルサイクル解析ではプレリミナリーな結果ではあるが、G2M期での異常が示唆されており、この時期でのアポトーシスが考えられている。また、蛍光免疫染色による観察では、発現タンパクは主に細胞質に存在したが、興味深いことに抗癌剤処理によって核に蓄積することが判明した。さらに機能解析を進めるために、相互作用する候補タンパクとの関連について調べている。BとCについては遺伝子導入による機能解析の準備が進行している。47個の未解析のDNA断片についても15個の同定に成功した。これらについても今後、精力的に解析を行なう。このようにDNA断片のクローニングと、そのDNA断片からの全長遺伝子の単離が堅実に進行しており、さらに新規遺伝子の細胞増殖に関連した機能解析にも明らかな成果が認められたことから、計画した実験系が十分に機能していると考えられる。本研究の継続によって癌細胞で生ずる広汎な異常DNAメチル化が、細胞の遺伝情報に与える重要性を示すことができると考える。本年度は論文発表には到達しなかったが、上述の進展状況より平成15年度に複数の報告が見込まれる。
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