研究概要 |
本研究はRLGS法で検出された60個の癌特異的な異常DNA断片の同定と関連遺伝子の解析を行うものである。現在までに、全体の70%のDNAを特定しており、すべてに異常DNAメチル化を認めている。また、10個についてRNA発現を調べたところ癌特異的な発現抑制を認めた。さらに、それらの内の5個(ASCL,SOCS-3,WNT10B,cell cycleに関したタンパク質、機能不明の膜輸送体)について継続して機能解析を行っている。ASCLと名づけたパイリンドメインを有する新規遺伝子は、細胞増殖抑制作用とアポトーシス誘導能を有していることが判明した。新規の癌抑制遺伝子としてCancer Research誌上で報告した。さらにyeast 2 hybrid法にて結合タンパクを検索した結果、ASCLは細胞分裂期に重要な働きをするanaphase promoting complexに関連したタンパク質と相互作用することが示唆されており、現在詳しく解析中である。SOCS-3遺伝子はJAK/STATおよびFAK系を抑制することが判り、増殖抑制作用に加えて細胞浸潤を抑制する効果もあることが示された。この結果についてOncogene誌に投稿中である。WNT10Bは増殖抑制と促進作用の双方を有しており、その増殖に対する効果についてFGF・2との関連を検索中である。残る2個に加えて、機能的に重要性が特に高いと思われる遺伝子についても解析を開始している。また、メチル化を受ける残りのDNAについては、関連遺伝子のメチル化による発現抑制を確定すべく実験を行っている。調べた7個については肝癌サンプルでメチル化と発現抑制に明瞭な相関が見られた。詳細についてさらに検討を加えている。このように、メチル化発現抑制遺伝子としてのまとめを進めるとともに、興味深い遺伝子については機能解析を精力的に行ってゆく。
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