本研究においてはRLGS法で検出された60個の癌特異的な異常DNA断片の同定と関連遺伝子の解析を行っている。JAK/STAT系を抑制するSOCS-3遺伝子のメチル化不活性化と増殖抑制作用について、本年度のoncogene誌上で報告した。さらに、新規同定のメチル化不活性化を受ける細胞外タンパクが、JAK/STAT系を抑制して細胞増殖を低下させることも見出した。SOCS-1も含めると3個のJAK/STAT系の抑制因子が不活性化を受けることが明らかとなり、肝細胞癌の発生においてJAK/STAT系の恒常的活性化が重要であることが示唆された。ASCL遺伝子については、細胞分裂の調整とDNAダメージ後の細胞周期調節機能の解明に大きな前進があった。すなわち、ASCLはanaphase promoting complexによるM期進行タンパクの破壊を促進させるとともに、DNAダメージ下ではATM関連タンパクの活性を維持することによって細胞周期を停止させることが明らかとなった。これらについては詳細に解析を続けており、平成18年度に発表する予定である。別個に同定したDNAメチル化を受けるタンパクは、興味深いことに転写抑制機構への関与が推察されている。癌における遺伝子不活性化を引き起こす因子の一つである可能性が考えられており、今後も精力的に研究を継続する。機能解析を行っていない遺伝子については、肝臓癌におけるメチル化不活性化を確定したものについて、次年度に発表を行う予定である。
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