研究課題/領域番号 |
14104020
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 泰弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80109975)
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研究分担者 |
久和 茂 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30177943)
土井 邦雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (70155612)
局 博一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (30142095)
西原 眞杉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
寺尾 恵治 国立感染研, 筑波霊長類センター, センター長 (30109920)
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キーワード | 内分泌攪乱化学物質 / 神経発達 / 行動評価 / ラット / カニクイザル / 甲状腺ホルモン / PCB / ビスフェノールA |
研究概要 |
研究目的:軟体動物や魚類及び両生類などでは内分泌撹乱化学物質の性ホルモン作用撹乱について、生態学研究を含め多くの報告があるが、高等哺乳類への影響に関しては依然議論が多い。他方、ダイオキシンやPCBによる神経発達への悪影響は、構造が類似する甲状腺ホルモンへの撹乱作用ではないかと推察されている。本研究ではラット、サル類を用いて環境化学物質の影響を神経発達の面から総合的に解析し、ヒトへのリスクの外挿を試み危害を評価することを目的としている。 研究の経過と成果 1)ビスフェノールAを妊娠期に投与したカニクイザル(2群30頭)について、次世代への影響の行動学的評価を進めた結果、この物質が霊長類の神経発達に影響することが明らかとなった。得られた結果はラットを用いた実験より明瞭であった。すなわち、母子行動、出会わせ試験とも暴露の母親から生まれた雄サルのみ、その行動特性が雌サルに類似していた。ヒトで言うところの性同一性障害に類似した表現型を考えられる。同様の傾向が統計的有意差はないが4段指迷路試験、アイコンタクト試験でも認められた。行動の異常はダイオキシン投与群と異なり、発達行動を追った場合にも見られた。現在、脳内の雌雄差のある神経核について、影響評価を行うべく、調査を進めている。 2)カニクイザルの血清を用いて予備的にPCBの汚染状況を確認したところ。個体差があること、個体によってはヒトと同様のレベルの汚染があること、少数例ではあるが高濃度汚染ザルから生まれた次世代個体で4段指迷路試験の成績が劣る傾向が見られた。高濃度汚染群と低濃度汚染群を用いて、次世代への影響評価を進めた。現在母子行動の解析を進めているが、高濃度汚染群と低濃度汚染群では、差は見られていない。 3)F344妊娠ラットに甲状腺ホルモン阻害を示すメチマゾールを投与し、次世代への影響を評価した。妊娠期間に投与した群と、出産後離乳期まで投与を続けた群では、神経行動に与える影響が異なっていることが明らかにされた。
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