研究概要 |
主に出芽酵母を材料に用い,膜タンパク質の選別機構に関して以下のような研究を行った。 1.酵母の小胞体-ゴルジ体間輸送の積み荷レセプターの候補として同定したレクチン様膜タンパク質Emp46/47pが,小胞体においてオリゴマーを形成すること,またこのオリゴマー形成が小胞体からのCOPII小胞の出芽に必須であることを示した。Emp47pは単独でオリゴマーを形成し,小胞体を出ることができるが,Emp46pはEmp47pとヘテロオリゴマーを作ることで初めてゴルジ体に進むことができる。またこのヘテロオリゴマーは,小胞体内およびCOPII小胞内では維持されるが,ゴルジ体に到達すると解離することがわかった。 2.このオリゴマー形成に依存したCOPII小胞形成を,精製Emp46/47Pとリン脂質からなるプロテオリポソームを用いて試験管内で完全に再構成することに成功した。この系を用い,Sar1 GTPaseによるGTPの加水分解は積み荷の良し悪しにかかわらず起こること,つまりGTPの加水分解がタイマーとして働いて,正しい積み荷のチェックに利用されている可能性を示唆した。 3.酵母鉄イオン輸送体はFet3p/Ftr1pというヘテロ2量体からなり,そのいずれが欠失しても細胞膜に正しく発現しない。この現象は小胞体における品質管理機構によるものであるが,Fet3pが小胞体に留まるのは,静的残留ではなくゴルジ体に存在する逆送レセプターRer1pに依存したリサイクリングによるものであることを明らかにした。またRer1pによる認識には,Fet3pの膜貫通領域にある極性アミノ酸残基が必須であることがわかった。
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