研究概要 |
主に出芽酵母を材料に用い,膜タンパク質の選別機構に関して以下のような研究を行った。 1.小胞体から輸送される積み荷タンパク質の選別は,輸送小胞を被覆するCOPIIコートとよばれるタンパク質複合体が,積み荷がもつ輸送シグナルに直接結合することによりなされている。この小胞体からのCOPII小胞の形成反応を,精製因子のみを用いたプロテオリポソームで積み荷依存的に完全再構成し,さらにこの系とFRETを組み合わせて、COPIIコートと積み荷タンパク質のリアルタイムでの結合,解離の様子をモニターする実験系を構築した。この実験系で解析を行った結果,この反応の鍵分子である低分子量GTPase Sarlpは,GTP加水分解により輸送されるタンパク質の選別を行っているということを明らかにした。 2.やはり低分子量GTPaseであるArfタンパク質は,ゴルジ体等からのCOPI小胞の形成時における積み荷選別の鍵を握っている。酵母arf1温度感受性変異アレルarf1-16の多コピーサプレッサーとして,Arf GAP (GTPase活性化因子)であるGLO3を得た.arf1-16に対する抑圧効果は,出芽酵母内に複数存在するArf GAPの中でもGLO3特異的であり,その特異性にはGlo3pのC末部分が重要な役割をもつことを明らかにした.Glo3pのC末には,ヒトから植物にいたるさまざまな真核生物において保存されている特徴的な配列があり,その配列がin vivoにおけるGlo3pの機能に重要であることを示唆した。
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