研究概要 |
主に出芽酵母を材料に用い,膜タンパク質の選別機構に関して以下のような研究を行った。 1.小胞体から輸送される積み荷タンパク質の選別は,輸送小胞を被覆するCOPIIコートとよばれるタンパク質複合体が,積み荷がもつ輸送シグナルに直接結合することによりなされている。この小胞体からのCOPII小胞の形成反応を,精製因子のみを用いたプロテオリポソームで積み荷依存的に完全再構成した系を用い,鍵分子である低分子量GTPase Sarlpの機能解析を進めた。さらにこの系を発展させて蛍光標識した積荷膜タンパク質をエバネッセント顕微鏡下で1分子観察する実験系を構築し,輸送小胞の形成過程を可視化することに成功した。 2.ゴルジ体の槽間のタンパク質輸送を,高速高感度共焦点レーザー顕微鏡を用いた新しい生細胞イメージングの方法論によって可視化し,槽成熟を証明するとともにさらにその分子機構を解析した。αCOPの変異であるrer1-1株では,槽成熟は正常の3分の1程度に遅くなるが完全には泊まらないことから,COPI小胞による機構とさらにそれ以外の機構が存在することを明らかにした。 3.同じく高速高感度共焦点レーザー顕微鏡を用いて,ゴルジ体からポストゴルジ網,さらには細胞膜への輸送を観察する系を構築した。低分子量GTPase Ypt31pが,Sec7pと共局在しながらゆっくり動く過程と,嬢細胞の先端に向かって高速で移動する過程の,2種類の過程に関与することを示した。
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