研究概要 |
主に出芽酵母を材料に用い,膜タンパク質の選別機構に関して以下のような研究成果を得た。 1)Rer1pを中心とした選別レセプターに関する研究:ゴルジ体膜タンパク質Rer1pは,ゴルジ体に誤って輸送されてきた一群の小胞体膜タンパク質の膜貫通領域の極性残基配列を直接認識し,COPI小胞を介して小胞体へと送り返す分子選別装置であることを明らかにした。 2)レクチン型選別レセプターに関する研究:レクチン様膜タンパク質Emp46/47pが,小胞体一ゴルジ体間をリサイクルする過程で糖タンパク質レセプターとして機能している可能性を示唆した。またその機能に小胞体とゴルジ体におけるオリゴマー形成が重要であることを示した。 3)輸送小胞形成時における膜タンパク質積み荷の選別の完全再構成系の構築:積み荷膜タンパク質依存性のCOPII小胞形成を,全て完全に精製した因子のみを用いて試験管内で再構成した。この系で,Sar1pのGTP加水分解が荷の選別に重要であることを明らかにした。さらに全反射顕微鏡を用いて,輸送小胞形成を可視化することに成功した。 4)膜タンパク質選別における脂質およびユビキチンの役割に関する研究:トリプトファン輸送体Tat2pと細胞膜ATPase Pma1pの細胞表面への輸送にユビキチン化が関与していることを明らかにした。とくに前者の選別輸送にはステロール脂質が密接に関与していることを示した。 5)膜タンパク質の選別過程のリアルタイム可視化の研究:高速高感度共焦点レーザー顕微鏡を用い,ゴルジ体の槽間のタンパク質輸送が槽の成熟によって起こることを証明した。その過程でダイナミックな膜の選別・分離が起こり,COPIに依存性と非依存性の機構があることを示した。
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