研究概要 |
この研究では2つのテーマに取り組んでいる。まず第1のテーマでは、Mesp1の発現によって規定される、初期中胚葉から由来する心臓、血管系の発生、分化の解析である。今年度はMesp1-creによって追跡できる心臓前駆細胞の中にMesp1で標識されない細胞群があることを見いだした。これらの細胞は心臓の刺激伝導系を形成する細胞の一部に分化することが明らかになり、これらの細胞が心臓の他の細胞とは由来が異なっていることが初めて示された。また心臓に発現するNotchシグナル標的因子Hesr2の遺伝子ノックアウトマウスの解析を行った。このマウスは生後10日以内に心臓の肥大を伴って死亡する。このマウスの心臓を生きたまま、エコーを用いて解析したところ、心房と心室の間に存在する弁の不全により、血液が逆流することが明らかになった。このマウスは心奇形のモデルマウスとして有用と思われる。 テーマ2では、体節中胚葉が分節性を獲得する分子機構を明らかにする目的で、遺伝学的解析を行った。その結果Dll1とDll3をリガンドとするNotchシグナル系と転写因子であるMesp2が複雑に相互作用することにより、体節内の前後極性が形成されることが明らかになってきた。今後この過程をさらに詳細に解析する目的で、GFP融合蛋白を発現する遺伝子ノックインマウスの作成を開始した。現在までに、Notch1,Dll1,Mesp2,Lunatic fringeにGFPタグをつけたノックインベクターの作成を終了している。
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