研究概要 |
本研究では、マウス発生過程で、最も初期に形成される心臓の発生分化に関わる遺伝子群Mesp1,Mesp2,Hesr1,Hesr2の機能解析(テーマ1)と沿軸中胚葉が体節を形成する分節メカニズム解明(テーマ2)を目指した研究を並行して行った。 まずテーマ1に関しては、1)Mesp1,Mesp2のダブルノックアウト(dKO)ES細胞を樹立しin vitro培養系で、心筋細胞に全く分化できないことを明らかにした。2)さらにマイクロアレイ解析を行ない、Mesp1,Mesp2の下流遺伝子カスケードにある遺伝子群を同定した。3)また、Hesr2及びHesr1/Hesr2ダブルノックアウトマウスの解析により、これらの遺伝子がTbx2の発現を抑制することにより、房室境界領域の決定・維持に重要な働きをすることを明らかにした。 またテーマ2に関しては、Mesp2を中心とした遺伝子カスケードを明らかにして、体節の分節化機構の解明につながる多くの重要な知見を得た。まず1)Mesp2遺伝子のエンハンサーを絞り込み、Tbx6とNotchシグナルが共役して始めてMesp2の誘導が起こることを明らかにした。2)転写因子Mesp2と蛍光分子の融合タンパク質をノックインしたマウスを作成し、Mesp2を生体内で可視化に成功し、Mesp2の発現前方境界が体節の分節境界を規定すること、またこの時Mesp2がNotch活性を抑制することにより体節境界及び体節内の極性も決定することを明らかにした。さらに3)Mesp2の下流遺伝子に関しては、まずEphA4を誘導することにより、体節の上皮化を誘導すること、また下流因子としてMesp2の負の制御因子であるRipply2を誘導すること、そしてMesp2-Ripply2のnegative-feedback系が体節の分節化を制御していることを明らかにした。
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