本研究では、脳神経系で発現する多様化受容体型分子群であるCNR/プロトカドヘリンに注目して研究を進めている。平成17年度、マウス及びヒトの種内でのCNR/プロトカドヘリン分子群の分子レベルでの遺伝的多様性についての解析結果を発表した。マウスにおいては、野生マウスを含めたマウス系統における遺伝的多様性の解析を行った結果、予想以上に遺伝的多型があることが確認された。また、CNR/プロトカドヘリン遺伝子クラスター内で、遺伝子変換が頻繁に起こっていること、この遺伝子変換がCNR/プロトカドヘリン遺伝子群における第1カドヘリン領域、第5カドヘリン領域のGC含量の不均一化、同一種内での遺伝子配夘均一化をもたらしていることも明らかとなった。更に、マウス種内でのCNR/プロトカドヘリン遺伝子の遺伝的多型はランダムなものではなく一定の方向性をもっていることが明らかとなった(Taguchi et al.)。 また、ヒト集団におけるCNR/プロトカドヘリンの遺伝的多型の解析を行った結果、ヒト集団内において高頻度の遺伝的多型が確認され、アミノ酸配列置換を伴うメジャーハプロタイプの存在、遺伝子欠損タイプが明らかになった。更に、ヒトにおける遺伝的多型形成にも遺伝子変換が関わっていることが明らかとなった(Miki et al.)。これらの結果は、CNR/プロトカドヘリン分子群の遺伝的多型がヒト脳機能の多様性や病態と関連している可能性を示唆している。現在、ヒト精神神経疾患との関わりについても解析を進めた。 また、CNR/プロトカドヘリンα遺伝子変換マウスの作製に成功し、このマウスでの脳機能異常の解析をすすめた。その結果、CNR/プロトカドヘリンは、神経回路形成や行動制御に必要な多様化膜分子群であることが明らかとなった。
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