研究課題/領域番号 |
14201008
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大橋 一章 早稲田大学, 文学部, 教授 (80120905)
|
研究分担者 |
河合 隆史 早稲田大学, 国際情報通信研究科, 助教授 (90308221)
肥田 路美 早稲田大学, 文学部, 助教授 (00318718)
野呂 影勇 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (70122851)
井上 哲理 神奈川工科大学, 工学部, 助教授 (30223259)
光谷 拓実 奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究室長 (90099961)
|
キーワード | 文化財 / 3次元データ保存法 / X線CTスキャン法 / 仏像彫刻 / 時代判定 / 製作技法 |
研究概要 |
本研究は、昨年11月に科研費基盤研究(A)に追加採択された。年末ではあったが早速設備・機材を手配し、12月末までには研究環境を整え、本年1月から2体の仏像の調査撮影をおこなった。2月22日には研究者が全員参加して研究会を開いた。本年度の研究実績は以下のとおり。 (1)文化財用X線CTスキャン法の研究 現在のX線CTスキャン装置は医療用に制作されており、大きさや処理面で文化財調査には不向きな点が多い。そのため文化財調査に最適な撮影方法、画像処理を検討した。まず仏像に対して垂直断層撮影や水平断層撮影など様々な角度から撮影したところ、いずれの角度から撮影しても全く同画像を取得することができ、小さな仏像の場合は複数をまとめて撮影することが理論上可能となった。これは撮影調査時間と消耗品の節減につながるものとして評価できる。 (2)X線CT画像からの3次元内部構造構築、3次元デジタルアーカイブ技術の研究 X線CTスキャン法で得られた断層写真をもとに、コンピュータ上での3次元内部構造の構築法ならびに3次元データ保存法(アーカイブ技術)について検討した。その結果、仏像の正確な法量計測が可能となり、内部構造についても内刳りの刀痕までも正確に立体構築することができ、さらに寄木造りの像の場合はプラモデルの組立図のような図面を書くことも可能となった。これは仏像彫刻の正確な基礎資料をデジタル資料として取得・保存できるという点で、今後の仏像調査のもっとも有効な手法になろう。 (3)本手法の文化財調査・研究における有効性の検討 本手法で得られた結果をもとに、対象文化財の美術史上における位置付けを検討した。今回調査対象の十輪寺の菩薩立像は従来明治時代の模古作といわれていたが、調査結果鎌倉時代に流行した一木作りの前後左右矧法まで作られていることが明らかになり、その制作年代は鎌倉時代にまで遡ると考えられた。従来の表面観察による曖昧な時代判定とは異なる客観的な基準を提示できた。
|