研究概要 |
レム睡眠中の急速眼球運動(REM : rapid eye movement)が夢見と関連していることは30年以上前から指摘されているが,これまで詳細な検討は行われていない.本研究の目的は,レム睡眠中のREMとそれに関連した脳電位を体系的に分析することにより,夢見についての過程モデルを提案することである.本年度は,眼球運動に先行もしくは後続して生じる脳電位を覚醒中とレム睡眠中で比較した.覚醒中は,視聴覚刺激装置を用いて,水平方向の眼球運動(サッカード)を誘発した.レム睡眠中のREMは正常終夜睡眠から記録した.健常な大学生・大学院生14名が2〜4晩の実験に参加した.高速生体情報記録システムにより,頭皮上26部位からサンプリング周波数1,000Hzで脳電位を測定した.その結果,次の4点が明らかになった.(a)覚醒中のサッカード開始点に約600ms先行して出現するプレサッカディック陰性電位と約150ms先行して出現するプレサッカディツク陽性電位は,いずれもレム睡眠中のREMの前には出現しない.(b)覚醒中のサッカード終了点から約100ms後に頂点をもって後頭部優位に出現する陽性電位(ラムダ反応)に類似した波が,レム睡眠中のREM後にも出現する.(C)しかし,レム睡眠中のラムダ様反応は,覚醒中のラムダ反応とは異なり,頭頂-後頭部優位で頂点潜時が短い(約80ms).(d)レム睡眠中のラムダ様反応は潜時約80msと潜時約180msの2つの陽性電位からなる.これらの知見の一部は英文短報として発表した.
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