研究概要 |
レム睡眠中の急速眼球運動(REM : rapid eye movement)が夢見と関連していることは30年以上前から指摘されているが,これまで詳細な検討は行われていない.本研究の目的は,レム睡眠中のREMとそれに関連した脳電位を体系的に分析することにより,夢見についての過程モデルを提案することである.本年度は,以下の2点について新しい知見を得た.(a)レム睡眠中のラムダ様反応が(覚醒中のラムダ反応と同様に)眼球運動の終了点に関連して出現することを昨年度明らかにしたが,本年度はその電位反応の電流源密度分布を詳細に検討した.その結果,覚醒中のラムダ反応(P1)のソースは後頭部にあったが,レム睡眠中のラムダ様反応(P1r)のソースは頭頂後頭部にあった.睡眠中に外界の視覚情報が入ってこないことを考えると,この結果は合理的なものであり,レム睡眠中には高次視覚野でイメージが生成されることを示唆している.(b)夢見体験と眼球運動との関連をより直接的に探るため,レム睡眠期の開始から3分後に被験者を覚醒させて夢見体験を聴取した.9名の実験参加者に順応日を含めて4夜の終夜睡眠記録を行い,計48回覚醒させて夢見報告を得た.そのうち夢を見ていたと報告したのは42回で報告率は87.5%であった.眼球運動の頻度と報告された夢の活動性・印象性には正の相関が認められた.さらに,夢を見ていなかったと報告したときにラムダ様反応が生じていなかったケースもあったことから,眼球運動後に生じる脳電位活動と夢見が直接的に関連していることが示唆された.これらの知見について,現在,追加分析により確認している.
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