研究概要 |
レム睡眠中の急速眼球運動(REM : rapid eye movement)が夢見と関連していることは30年以上前から指摘されているが,これまで詳細な検討は行われていない.本研究の目的は,レム睡眠中のREMとそれに関連した脳電位を体系的に分析することにより,夢見についての過程モデルを提案することである.本年度は,3つの実験的検討を行った.第1に,レム睡眠期に優勢な背景脳波活動を明らかにするために,睡眠ポリグラフの詳細な判定を5秒間の小区間に分けて行った.その結果,レム睡眠期の大半が"シータ波が出現している区間"と"脳波が平坦な区間"で占められていることが明らかになった.また,シータ波は中心部優位の頭皮上分布を示した.第2に,レム睡眠期の急速眼球運動前後で,脳波のスペクトル解析を行った.その結果,高次精神活動に関連するといわれるガンマ帯域(35-45Hz)のパワが,急速眼球運動後に増大することが示された.第3に,主観的夢見体験と急速眼球運動密度の関係について検討した.20名の大学生・大学院生を対象に,レム睡眠から覚醒させて80例以上の夢見体験を聴取した結果,印象に残る夢ほどその直前に眼球運動が頻繁に生じていることが明らかになった.これらの知見に加えて,過去2年間の研究成果を整理し,レム睡眠中の夢見過程についてのモデル-レム睡眠中には,外界の感覚入力が遮断された状態で,覚醒中とは異なる機序で眼球運動が発生し,それが視覚野を含む脳領域を活性化させることで夢見体験がより鮮明なものになる-を提唱した.
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