研究概要 |
14年度は,光トポグラフィ装置(NIRS)とサーモグラフィーの測定可能性を確認した結果,乳幼児の認知・情動的クオリアが,母親顔刺激,音声,触覚的接触等に対する心理生理的反応が現れた。脳損傷者の認知・情動的クオリアの研究では,弁別学習課題で脳損傷患者の高次情報処理能力の機能不全を検討し,刺激要素の処理に関わる前頭前野の移行能力の不全に関係することが示唆された。15年度は,母子相互作用下での乳児の脳内でのマルチモーダル処理についてNIRSを用いて検討するため,健常成人を対象とする視覚的対象処理中の脳活動をNIRSにより測定した結果、新奇三次元物体の観察方向が最も好ましいと感じる方向からずれるに従い、後頭一頭頂領域および左右紡錘状回の活性化が高まることを認めた。16年度は,新生児及び乳児の母乳や人工乳のニオイに対する眼窩前頭領域の活動のNIRSによる嗅覚刺激の比較検討をした結果,母乳や人工乳の哺育経験に関係なく,母乳に脳の活性化が顕著に生じるが,人工乳哺育群以外は人工乳に対し活性化が低いことを認めた。さらに,被虐待児として施設に保護されている乳児の前頭前野の活動の発達的変化を観察した結果,3ヶ月齢で無表情の女性顔刺激に対する前頭領域の活性化に左右差が認められた。17年度は,乳幼児の表情認知の脳血行動態反応を縦断的に検討した結果,表情弁別は生後3ヶ月では未発達で,生後6ヶ月児以後に発達した認知・情動的クオリアを持つことを認めた。また,種々な母親の声を呈示し新生児の前頭部領域の血行動態反応を測定した結果,抑揚のある母親の音声は,抑揚のない音声より前頭部領域を活性化させていた。
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