研究概要 |
14年度は,次の3つの観点からこのテーマに関して理論的,実験的及び調査的な研究を行った。 1.教師のディスカッション教育の技能診断と改善:教育現場の教師(小学校,中学校,高校)を対象に,体系的にディスカッションと中心にした授業を行っていく場合の技能診断を行った.その結果,状況依存的に,柔軟に,生徒から創造的な議論や意見を引き出し,その意見を自己の教授プランの中に組み込みながら,生徒と一体となって授業を創出していくための技能や態度に大きな欠点があることを多くの教師が認識している.その欠如した技能を体系的に再教育してくれるような研修制度や適切な改善支援プログラムの開発を望む声が大であることがわかった.しかし,そうした強い認識や自己改善に向けての志向性や姿勢や態度の強さは中高校の教師よりも小学生教師において特に顕著であった 2.「ディスカッション教育」プログラム開発:これまでの科研研究で同定された議論技能や議論過程に関する知見に基づき,訓練すべき技能,議論過程に関わる諸要因,議論の展開過程,議論の評価法,およびそれらを教師が生徒(大学生レベル)に教えるための技法の解説書や訓練課題用教材を作成した.次に,それにもとづき45名の教師に実施し,その有効性を探索的に検討し,標準的なプログラム開発の枠組みを創出した.現在,この基本的な枠組みのもとに,発達段階に応じた児童生徒に柔軟に対処していくための教授プログラムの開発,すなわち効果的なディスカッションの進め方についての「実践技法」プログラムと何を(態度・価値・技法)対象にするのかといった「教育内容」プログラムの開発に着手している. 3.教師のディスカッション技能改善支援システムの開発:インターネットを巧く利用しながら,現場教師のディスカッション教育を展開していく上での実践的な悩みや問題点の克服さらには新たな技法や解決策について,オンラインで,常時相談できるような教育支援システム作りを行い,現在多くの情報を収集すると同時に,それに適切に対処する支援対策システムを構築しつつある.また同時に,定期的に,ディスカッション教育研修会を開催しながら現場の教師集団の教授技能能力の向上を図りつつある.
|