研究概要 |
15年度は,次の3つの観点からこのテーマに関して理論的,実験的及び調査的な研究を行った。 1.教師のディスカッション教育の技能診断と改善:対話型授業を実践しているベテラン教師(小学校)の実際の授業を,一年間,追跡録画し,(1)その授業展開の仕方(2)教師と生徒との間の対話スタイルや対話技法,(3)生徒間の対話を促進させるような質問様式や質問タイプの定性的並びに定量的分析を行った.また,現在,国家策として,知識貯蔵型の学びのスタイル育成に繋がった従来の知識伝達型授業から問題発見・解決型の学習スタイルの育成を目指す対話型授業への変革期にある中国の大学教師の教授行動分析を行った.両研究を通して,教師がどのような教授スタイルを実践するかには,ディスカッション技能に対する自己のメタ認知的知識や技能についての認識,各教師が抱いている教授目標(どんな能力を育成するか)や児童生徒観(何ができるか),さらには生徒のディスカッション技能についての診断評価が大きく依存していることが分かった. 2.「ディスカッション教育」に関する発達モデルの構築:授業場面で、深みのある対話を生み出す授業を展開できるか否かには,「対話する授業」の実現を支えている現場教師のコミュニケーションスキルの発達に関する暗黙知が密接に関係している.だが,その暗黙(実践)知は実践の場で「行われる」知であり、教師本人でさえ言語化し難い.こうした前提の下に対話型授業を実践している小学校教師(低学年,中学年,高学年)を対象に,詳細な面接調査を行い,教育現場に潜在している「コミュニケーションスキル発達モデル」の特徴を浮き彫りにし,発達モデルの雛形を構築した. 3.教師のディスカッション技能改善支援システムの開発:現場教師のディスカッション教育を展開していく上での実践的な悩みや問題点の克服さらには新たな技法や解決策について,オンラインで,常時相談できるような教育支援システム作りを行い,現在多くの情報を収集すると同時に,それに適切に対処する支援対策システムを構築しつつある。また同時に,定期的に,ディスカッション教育研修会を開催しながら現場の教師集団の教授技能能力の向上を図りつつある.
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