研究概要 |
本研究は、全年齢階層における健康及び不健康状態の形成,及び,高齢者の要介護・要支援等の状態の形成において,デモグラフィックな変数のみならず社会経済的地位がどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的としている.今年度は,平成12年度に科研費で実施した全国調査の再分析を試みながら,次年度に実施する予定の全国調査の検討を行った.その途中経過を保健医療社会学会,社会政策学会,日本社会学会で報告した.学会での意見交換を踏まえた試行錯誤の結果,(1)SRH,(2)慢性疾患の有無,(3)痛み・不快感,(4)活動制限,(5)抑欝状態といった五つの変数を総合化し,III-healthという総合変数を構成する方針を確立した.上記5変数を観測変数とする1因子モデルの確証的因子分析の結果,CFIが0.95を示し,モデルの一定の適合性が示された.また,年齢,性別,婚姻上の地位といったデモグラフィックな要因と,教育年数,世態収入,就業状態といった社会経済的要因のIII-healthに対する影響を検討するため,SEMによる分析を試みた.その結果,x2/dfが5.384となり,モデルの適合度は良好だった.この分析の結果,平成13年度,平成14年度に試みた重回帰分析やロジスティック回帰分析の結果では十分明らかとならなかった関係が明らかとなった.標準化パス係数の値から,非婚・離死別など配偶者のいないとIII-healthの状態に陥りやすく,また,教育年数が短いとIII-healthの状態に陥りやすいことが明らかとなった.さらに失業,定年退職もIII-healthにとってのリスクであることが確認された.所得とSRHとの関連を認める研究が多く,以前の分析ではこのことが確認されたが,今回,新たに就労状況を投入したモデルでは,収入との有意な関連は見られなかった.
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