研究課題
基盤研究(A)
奉納絵馬は嘉永年間(1850年前後)を境として、明治にはいると江戸時代とは色調や配色が異なる彩色で製作されたものが多数見られる。これには、舶来品を含む多数の絵具が使われ、画材の多様化が窺える。そこで、これら量産絵馬に使用される絵具の変遷と時代的特色についての研究を行うにあたり、彩色顔料の分析方法を検討した。まず、従来の分析方法に加えて非破壊で効率的に分析でき、適用が難しかった顔料にも応用できる可能性のあるX線透過試験装置を導入し、多数の絵馬の分析が可能にならないかを検討した。装置の導入に向けて、輝尽性蛍光シート(I.P)法、イメージインテンシファイヤ(I.I)法の2種類の方法を検討し、輝尽性蛍光シートを備えたカラーシンチレータシステムX線透過装置を導入した。次に、標準顔料で基準ステップゲージを作成し、条件を変え測定を行い、同定方法の確立をめざした。また、300点の絵馬について目視観察、写真撮影、赤外線撮影、ケイ光X線分析、X線撮影を行った。これらをデータベース化し、X線撮影により絵馬の顔料同定に応用できるかを検討した。その結果、一部の同系色の顔料についてはその種類を特定できる可能性があることがわかった。