研究課題
今年度も、昨年度に引き続き研究分担者を通じて独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所の所蔵する膨大な発掘調査報告書によって日本原始古代遺跡の繊維製品関係の資料集成を行った。調査、検索事項については従来どおりで、資料カードに記述して資料台帳を作成し、データーベース化を行った。本年度の現地資料調査は、各自の分担時代、地域のみならず、次のように重点的な調査地域を設定し、日本列島全体の状況を把握することとした。(1)一昨年度、昨年度に続き、九州地域に重点をおき、弥生時代、古墳時代遺跡出土の繊維製品関係資料の実地調査によって中国・朝鮮半島との関連・交流関係を追及するため、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県で、さらには古墳や地下式横穴墳から鉄器付着の繊維製品を大量に出土している宮崎県の西都原考古博物館で本年も調査を続行し、調査は7年におよぶことになった。(2)韓国内の現地調査も継続させ、今年度は2ヶ所の地域で実施し、韓国国立昌原文化財研究所で伽耶地域の古墳から出土した繊維製品と、韓国国立扶余文化財研究所で百済地域の中心地の扶余・公州の古墳から出土した繊維製品とを調査した。(3)本年度は、とくにこれまで調査の行き届いていない山陰と北陸地域の現地調査を実施した。山陰地方では、鳥取市青谷上寺地遺跡の弥生時代の絹そのものを調査することができた。北陸地方では、石川県能登半島の古墳から出土した繊維製品を富山大学、富山市埋蔵文化財センター、氷見市立博物館で集中して行った。(4)(1)(2)に関連して、日本の資料と関連の深い韓国との情報交流をはかるため、考古研究者1名(世宗大学校河文植教授)を招聘し、情報を入手するとともに意見交換を行った。(5)今年度を含めてこれまでの現地資料調査の成果の一部を松浦、澤田をはじめ数人の研究分担者による研究発表が本年4月刊行予定の考古学専門誌『季刊考古学』に遺跡出土繊維製品の特集号として掲載される。
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