研究課題
基盤研究(A)
本研究は江戸初期、文禄から明暦末年までの約60年間に出版された全書籍の出版年表を作成することが目的であり、個々の書物を実見し刊記を採録して、年代順月順に配列しながらその作成にあたる。平成14年度においては、次の通り調査・研究を行った。1.基本情報の収集のため、国書総目録、仏書解説大辞典、各種古本目録などから該当する書名を抽出して基本情報リストを作成した2.国立国会図書館(420点)、天理図書館(178点)、国立公文書館(185点)、宮内庁書陵部(306点)、静嘉堂文庫(120点)、大東急記念文庫(152点)等の大手の所蔵文庫においては蔵書目録をもとに当該書の所蔵リストを作成し、調査を行った(上記括弧内点数)3.天理図書館、布施美術館、瑞光寺、東北大学狩野文庫、北海道大学図書館、神宮文庫、石川県立図書館等においては実地に書物を調査し調査カードを作成し、併せてデジカメによる刊記部分の収集も行った。また、上記の調査を基に国立国会図書館、宮内庁書陵部、天理図書館から当該書の一部を紙焼写真で収集して、それらをパソコンを用いて整理・入力して、「江戸時代初期出版年表(稿本)」を作成した。年表の内容は、古活字・整版の区別、書名、冊数、刊記部分の転記、所蔵者名・請求記号、その他同版の所蔵文庫名から成る。現時点では4年計画の初年度で、凡そ目的の4分の1の調査を行うことができたものと判断される。なお、平成14年度末の現時点で、実見、未実見を合わせて年表掲載書籍数は文禄14点、慶長295点、元和183点、寛永1626点、正保580点、慶安526点、承応307点、明暦364点で、総数3895点(未見2282点)である。江戸初期においては、出版物の巻末に刊記を記さない書物も多くあり、古活字版にあっては文禄から正保ころに出版されていることは確実なので、刊記のない書物の扱い方に工夫が必要であるが、刊記のある書物だけの年表でも江戸時代初期の文化状況を研究するうえでの極めて貴重な情報の提供となりうる。
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