研究課題/領域番号 |
14203002
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済理論
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
飯田 裕康 帝京大学, 経済学部, 教授 (30051444)
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研究分担者 |
中宮 光隆 熊本県立大学, 総合管理学部, 学部長 (80155811)
吉尾 清 長崎県立大学, 経済学部, 助教授 (10240235)
奥田 聡 大阪経済大学, 経済学部, 専任講師 (20233455)
河合 康夫 武蔵大学, 経済学部, 教授 (20195035)
高橋 信勝 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (80339564)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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キーワード | マルサス / 人口論 / 救貧法 / 社会主義 / 古典経済学 / ホイッグ主義 / 経済学の普及 / 貧困 |
研究概要 |
1.この研究のプロジェクトは『人口論』の著者T.R.マルサスとその同時代人たちの社会・経済思想を、多彩で広範囲におよぶ当時の知的世界のなかに位置づけ、経済学(Political Economy)の形成・確立・普及の時代の経済社会、はたまた政治社会をめぐる知性史および思想史的達成の一端をあきらかにすることを目的とした。本プロジェクトの進展の過程で、今日思想史研究に提示されている方法論が、いずれも知性史的諸現象総体の解明にとっては部分的有効性しかもちえないこともあきらかになり、むしろ多様な方法的視座を緊張関係のなかにおくことによって、将来につなぐ知見が得られることもあきらかになった。この時代は、ナポレオン戦争後のイギリス社会の政治的利害の錯綜のなかに、一個人の複雑な思想営為が、宗教的信条への葛藤と絡みつつ展開する特異な時期でもある。ここでは、マルサスをひとつの参照軸として、そうした時代を切り取る企てが、研究協力者各自の問題関心を尊重しつつなされたわけであるが、そのことは結果的には、先にふれた多様な知性と思想の構造を、部分的にせよつかみ取ることに成功したと思われる。 2.マルサスの人口論は、まさしく経済学上の最有力な仮説であったとともに、政策実践上の基軸のひとつとして、時論的に議論されたことはいうまでもない。本プロジェクトは、その議論さえも複雑に絡む政治的営為のなかで議論の当事者の位置を微妙に揺らしつつ、当該社会の知性の構造をあきらかにしえたと考える。本プロジェクトの展開過程でなされた国際的研究交流を通じて、そのことは鮮明に理解された。とくに、社会主義思想の展開に応じて、時代的知性の担い手たちの知性の組み立てがダイナミックに変化する様は、あらためてこの時代の様相のなかでの社会主義思想の意味を確認しえた。従来の「社会思想史」的な接近がもつ一面性への批判的対処として、今後の研究心かのなかで生かされていくことが大いに期待される。 3.本プロジェクトの研究対象は、まさしく広範囲におよぶ、研究の進展は、その範囲をいっそう拡張するように思われる。それと併せて、本プロジェクトのような時代的知性の錯綜する思想営為を解き明かす上で、資料アクセスの特異性について確認しておかねばならない。本プロジェクトの研究協力者たちが、いずれもイギリスにおいて「マヌスクリプト」レベルの資料に直接関わる努力をなしえたことは、たんなる文献研究の域を超え出る研究素材の重要性について、広く我が国の学会に訴えることができたと確信している。また同時に、本プロジェクトのような対象への接近が、研究者に十分な資料判断能力と、それをなす十分な時間を必要とするものであることも明かである。本プロジェクトの成果は、2006年に刊行される予定である。
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