研究分担者 |
小林 亮一 名古屋大学, 大学院・多元数理研究科, 教授 (20162034)
満渕 俊樹 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80116102)
森田 茂之 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (70011674)
中島 啓 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00201666)
辻 元 上智大学, 理工学部, 教授 (30172000)
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研究概要 |
本研究課題の目的は,コンパクトケーラー多様体Mに標準計量,特に定スカラー曲率ケーラー計量が存在するための条件を幾何学的不変式論の立場から与えることである.平成15年度は漸近的Chow安定性と定スカラー曲率ケーラー計量の存在が密接に関連することがわかり,大きな進展を見た. まず,Lが豊富な直線束の時にその第一チャーン類に定スカラー曲率ケーラー形式が存在するかを考える.正則ベクトル場が0しかない場合,定スカラー曲率ケーラー計量が存在するならば,(M, L)は漸近的にChow安定であることが示された(S.K.ドナルドソン). そこで,正則ベクトル場が0以外に存在する場合を考える.この場合,定スカラー曲率計量が存在する障害となる積分不変量が本研究代表者により得られていた.また,この拡張が2通り知られていた.今年度の研究でこの2つの拡張を含む積分不変量が得られた.そして,(M, L)が漸近的にChow安定であるならあるMの次元個のある積分不変量が0となることがわかった.また,これらの積分不変量が0であり,定スカラー曲率ケーラー計量を持つならば漸近的Chow安定であることが示された.これは分担者満渕俊樹による.逆が成立するかどうかが興味深いが,多くの専門家は漸近的Chow安定性ではなく,K安定性とよばれる安定性が必要十分条件ではないかと予想している.トーリック多様体の場合に,K安定性と定スカラー曲率計量の存在との関係の研究に進展があった.特に,トーリックFano多様体の場合は積分不変量が消えることと,ケーラー・アインシュタイン計量が存在することが同値であることがジューにより証明された.これらの結果はトーリックFano多様体でない場合には一般に成立しないことがわかる.一般的結果を得ることが今後の目標である.
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