超幾何・パンルヴェ系の総合的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14204009
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 野海 正俊 神戸大学, 自然科学研究科, 教授 (80164672)
• 研究分担者: 高野 恭一 神戸大学, 理学部, 教授 (10011678) ; 増田 哲 神戸大学, 自然科学研究科, 助手 (00335457) ; 太田 泰広 神戸大学, 自然科学研究科, 助教授 (10213745) ; 山田 泰彦 神戸大学, 理学部, 教授 (00202383) ; 齋藤 政彦 神戸大学, 理学部, 教授 (80183044)
• キーワード: 離散パンルヴェ方程式 / 楕円パンルヴェ方程式 / 楕円超幾何関数 / モノドロミー多様体 / ベックルント変換 / リッカチ型特殊解 / 代数関数解

研究概要

この研究の本年度の成果は以下の通りである。
1:離散パンルヴェ方程式とその特殊解
梶原・増田・太田・野海・山田は、離散パンルヴェ方程式の階層の最上位にあるE_8型楕円差分パンルヴェ方程式と、その退化として得られる一連の離散パンルヴェ方程式に関して、超幾何型特殊解の研究を行なった。特に楕円差分パンルヴェ方程式に対し、配置空間の幾何学的からr関数の枠組を構築し、この差分方程式を明示的に解析することを可能にした。その応用として、_<10>E_9型の楕円超幾何関数で表されるリッカチ型特殊解を構成した。退化として得られるqパンルヴェ方程式系の系列についても、q超幾何関数で表示される一連のリカッチ型の解の構成を行なっている。
2:パンルヴェ方程式とその幾何学
齋藤は、稲葉・岩崎との共同研究により、パンルヴェ第6方程式の定義多様体およびモノドロミー多様体、またリーマン・ヒルベルト対応による両者の相互関係に関する代数幾何学的研究を行い、パンルヴェ第6方程式の対称性の幾何学的解釈を与えた。また、増田はパンルヴェ第6方程式の梅村型代数関数解のr関数に対して、普遍指標型行列式による明示公式を確立した。
3:超幾何関数とモジュライ空間に関する研究
野海は、梶原との共同研究により楕円シグマ関数のコーシー行列式を用いて、楕円超幾何級数の変換公式を系統的に導く方法を提案した。また加藤と共に、代数方程式の解を表す一般超幾何関数について、そのモノドロミー群と展開写像の研究を行なった。佐々木は、吉田と共にグラスマン多様体Gr(n,2n)の超幾何関数の微分方程式の不変式論的研究を行なった。吉岡は、ベクトル束のモジュライ空間に関して、安定性とフーリエ・向井変換に関する研究を行なった。

研究成果

• [文献書誌] K.Kajiwara: "_<10>E_9 solution to the elliptic Painleve equation"J.Phys.A. 36. L263-L272 (2003)
• [文献書誌] M.Kato: "Monodromy groups of hypergeometric functions satisfying algebraic equations"Tohoku Math.J.. 55. 189-205 (2003)
• [文献書誌] Y.Kajihara: "Multiple elliptic hypergeometric series. An approach from the Cauchy determinant"Indag.Math.. 14. 395-421 (2003)
• [文献書誌] B.Grammaticos: "A unified description of the asymmetric q-P_V and d-P_<IV> equations and their Schlesinger transformations"J.Nonlinear Math.Phys.. 10. 215-228 (2003)
• [文献書誌] T.Takenawa: "The space of initial conditions for linearizable mappings"Nonlinearity. 16. 457-477 (2003)
• [文献書誌] T.Masuda: "On a class of algebraic solutions to the sixth Painleve equation, its determinant formula and coalescence cascade"Funkcial.Ekvac.. 46. 121-171 (2003)
• [文献書誌] T.Masuda: "On the rational solutions of q-Painleve V equation"Nagoya Math.J.. 169. 119-143 (2003)
• [文献書誌] T.Sasaki: "Invariant theory for linear differential systems modeled after the Grassmanniann Gr(n, 2n)"Nagoya Math.J.. 171. 163-186 (2003)
• [文献書誌] M.Inaba: "Backlund tranformations of the sixth Painleve equation in terms of Riemann-Hilbert correspondence"Int.Math.Res.Not. 1. 1-30 (2004)
• [文献書誌] A.Kuniba: "Geometric crystal and tropical R for D^<(1)>_n"Int.Math.Res.Not.. 48. 2565-2620 (2003)
• [文献書誌] K.Yoshioka: "Twisted stability and Fourier-Mukai transform I"Compositio Math.. 138. 261-288 (2003)
• [文献書誌] K.Kajiwara: "On a q-difference Painleve III equation. I. Derivation, symmetry and Riccati type solutions"J.Nonlinear Math.Phys.. 10. 86-102 (2003)
• [文献書誌] M.Noumi: "Painleve equations through symmetry"American Mathematical Society. 168 (2004)