研究概要 |
初年度は、磁気光分光に使用する量子ドットの作製、及び各種光学測定を行った。 1.MBE法を用いたCuCl量子ドットおよび超薄膜の作製を行い、AFM測定を行うことによって、三角ピラミッド型の量子ドット、原子スケールステップ構造を示す平坦超薄膜構造を観察し、これら構造の作製条件を明らかにした。さらに、反射、発光スペクトルの測定を行い、理論計算との比較によってこの試料が位相緩和減衰定数が0.1meVのオーダーを示す比較的良質の単結晶であることを示した。 2.この試料に対してピコ秒パルスレーザーを用いて励起子分子共鳴エネルギー付近で四光波混合実験を行った結果、効率よく3次及び5次の非線形信号が観測できることを示した。 3.NaCl中のCuCl量子ドットについて、紫外励起による赤外過渡吸収スペクトルとそのピコ秒時間応答を測定した。その結果、従来過渡吸収は励起子寿命を反映した応答を示すと考えられていたものが、実は励起子分子の寿命を反映した成分が多く含まれることを明らかにし、空間閉じ込めを受けた励起子分子の内部運動に関する励起状態について初めて考察した。 4.購入したストリークカメラによって、CuCl量子ドットについて発光スペクトルのピコ秒時間分解分光を行い、励起子発光の時間応答の試料依存性を吟味した。 5.CdTe : Mnについて、アンチストークスラインの存在を明らかにし、励起エネルギー、磁場、温度に関する依存性を測定し、その発生メカニズムについて議論した。ZnO : Mn, Cr, Niについて磁気円2色性の測定を行い、磁気的性質の変化について議論した。 6.これらの成果を踏まえて、来年度は超伝導マグネットを用いた磁気光スペクトル、スピンフリップ散乱スペクトルの測定を通じて、3重項励起子緩和や交換相互作用の量子ドットサイズ依存性についての研究に発展させる。
|