モルフォトロピック相境界組成をもつリラクサー誘電体のミクロ構造制御

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14204031
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 上江洲 由晃 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10063744)
• キーワード: リラクサー / 複合ペロブスカイト酸化物 / 強誘奄体薄膜 / レーザーデポジション成膜装置 / 圧電性 / 誘電率 / モルフォトロピック相境界 / 量子常誘電体

研究概要

本年度パルスレーザーデポジション成膜装置を用いて、以下のようなペロブスカイト複合酸化物薄膜の作成を行った。
(1)リラクサーPb(Sc1/2Nb1/2)O3(PSN)薄膜およびPSNと強誘電体PbTiO3(PT)との混晶系で特にモルフォトロピック相境界と呼ばれている2つの相を分ける濃度境界にある薄膜(PSN/43%PT):この物質は特にBサイトイオンの規則・不規則性をアニール条件で制御できる点に興味がある。特定の軸方向に配向したエピタキシャル薄膜の成長条件を、基板の種類、基板湿度、酸素分圧、エキシマレーザーの強度、繰り返しパルス数を色々交えて調べた。その結果、基板温度550℃から650℃、酸素分圧150〜375mTorr、レーザーフルーエンス1〜1.4J/cm2、パルス周波数5Hzでエピ膜が成長した。基板は格子定数が近いSrTiO3(STO)とMgOを用いたが、いずれもエピ膜成長が可能であった。しかし裏面の凹凸をAFMで観察したところ、STOを用いた時の方が均一な膜が成長した。また基板の温度が高いほど凹凸は減少した。できた膜をX線精密回折計を用いて海外共同研究者のKiatが所長をしているフランスECPの研究所で構造評価を行った。この結果、バルクと同じ温度で相転移すること、またバルクでは1次相転移を示すが、薄膜では基板との相互作用の影響で変化が連続的になることを見出した。現在薄膜の誘電的特性評価、非線形光学特性評価を行っている。本年度の研究で、19パルスショットで1格子の単分子膜が成長することが明らかになった。今後はこれをもとに超格子薄膜を作成していく予定である。
(2)量子常誘電体SrTiO3と強誘電体BaTiO3の固溶体BSTエピ薄膜を組成比を変えて作成した。特に量子常誘電体の臨界組成を中心に行い、また極低温X線回折装置を用いた構造変化を組成比を変えて測定した。

研究成果

• [文献書誌] 上江洲由晃: "特集 J-PARCへの夢-J-PARCが拓くサイエンス・テクノロジー、本質的不均一構造をもつ誘電体のダイナミクス"日本中性子科学会誌. 14, no1. 15-16 (2004)
• [文献書誌] Y.Uesu, K.Yasukawa, N.Saito, S.Odoulov, K.Shcherbin, A.Ryskin: "Backward-wave four-wave mixing and coherent oscillation in CdF2:Ga,Y"Appl.Phys.B. (印刷中). 1-5 (2004)
• [文献書誌] Guobao Li, Yoshiaki Uesu et al.: "The structural and electric properties of the perovskite system BaTiO3-Ba(Fe1/2Ta1/2)O3"J.Phys.Chem.Solids. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Yoshiaki UESU et al.: "Polar Order in Quantum Paraelectric SrTi16O3 and SrTi18O3 at Low Temperatur"J.Phys.Soc.Japan (Letters). (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Y.Uesu.K.Ishikawa, Y.Yamada: "Colossal response induced by hetero-structure fluctuation"Trans.Mat.Res.Soc.Jpn.. 28. 91-96 (2003)
• [文献書誌] M.Fukushima, Guobao Li, Y.Uesu, K.Kohn: "Structure and dielectric properties of Ba(1-x)La(x)Ti (1-x)Cr(x)O3"Ferroelectrics. 286. 801-806 (2003)
• [文献書誌] Y.Uesu et al.: "SHG microscopic studies on low temperature phase transitions of SrTiO3(16) and SrTiO3(18)"Ferroelectrics. 285. 393-400 (2003)
• [文献書誌] N.Kato, I.Hirosawa, M.Sato, N.Ikeda, Y.Uesu: "Study of 2D phase transition of polar organic dye molecules at the air-water interphase by using grazing-incidence x-ray diffraction"Ferroelectrics. 286. 921-926 (2003)
• [文献書誌] M.Fukunaga, Y.Uesu: "Compact and simple apparatus for measuring direct piezoelectricity"Jpn.J.Appl.Phys.. 42. 6115-6117 (2003)
• [文献書誌] Y.Uesu, K.Yasukawa, N.Saito, S.Itoh, S.Odoulov, K.Shcherbin, A.Ryskin: "Dynamic grating in semiconductor CdF2:Ga:Y"J.Opt.Soc.Am.. B20. 1905-1911 (2003)