研究概要 |
本年度は最終年度にあたるが、リラクサー薄膜作成およびリラクサー関連物質に関して飛躍的な進展があった。成果を以下にまとめる。 (1)リラクサーPb(Sc1/2Nb1/2)O3(PSN)薄膜、およびPSNと強誘電体PbTiO3(PT)のモルフォトロピック相境界(MPB)組成薄膜をパルスレーザー成膜(PLD)法で作成し、その構造の評価を行った。その結果、室温ではPSNは擬立方晶、MPB組成をもつPSN/PTは単斜晶であることを明らかにした。これは薄膜についての初めての報告である。またPSN/PTは温度上昇に伴い単斜晶から極性をもたない正方晶へと相転移をすること、またさらに温度を上げても立方晶にはならないことを明らかにした。(Jpn.J.Appl.Phys.:45,No.1,L42-L45,2006) (2)PSN/PT超格子薄膜の作成:PSNとPTをPLD法で交互に積んだ超格子薄膜を初めて作成することに成功し、その相関距離、モザイク性をX線回折で評価した。5次までの超格子反射が観測され、確かに超格子薄膜が作成されていることを確認した。 (3)温度に対してフラットで巨大な誘電率をもつが誘電損の大きなCaCu3Ti4O12(CCTO)をCaTiO3で挟んだ薄膜を作成し、誘電損を格段に減少させることに成功した。(2006年度春の物理学会誘電体分科会発表予定)。 (4)Liを添加した量子常誘電体KTaO3の構造相転移をSHG顕微鏡、X線回折、中性子散乱、誘電測定を駆使して測定し、電場のもとで著しい経歴依存性を示すこと、低温では秩序変数は非エルゴード的な挙動示すこと、極性ナノ領域の発生に対応する中間相があることを見出した。これらの事実はこの系がリラクサーであることを示している。(Phys.Rev.B72,144103(2005))
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