研究概要 |
充填スクッテルダイト化合物は一般式MT_4X_<12>(M=希土類元素など、T=遷移金属元素、X=プニコゲン元素)で表され、異方的超伝導や四極子転移など強相関系特有の興味深い物性を示す。我々はすでに高圧合成法を用いて、軽希土類の充填スクッテルダイト化合物を系統的に合成し、物性を研究してきた。重希土類が入った充填スクッテルダイト化合物の研究はほとんど行われていない。我々は高圧合成法を用いて、重希土類の入る新スクッテルダイト化合物LnT_4P_<12>(Ln=heavy lanthanide; T=Fe,Ru,Os)の合成を試み、新物質開発に成功した。 Fe系のLnFe_4P_<12>(Ln=Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y)を系統的に高温、高圧下で合成し、これらの物性を研究した。ここで、Gd,Tb,Dy,Ho,Er化合物は強磁性、Lu,Y化合物は超伝導、Tm,Ybは常磁性で、価数揺動する可能性があることを見出した。Ru系では、LnRu_4P_<12>(Ln=Gd,Tb,Y)の3種類しか合成できていない。Gd,Tb化合物は反強磁性体になり、Fe系やOs系化合物とは異なる振舞いをした。TbRu_4P_<12>の中性子回折実験を行って磁気構造を調べ、反強磁性になることを確認したYRu_4P_<12>は9K付近で超伝導状態に転移した。Os系ではLnOs_4P_<12>(Ln=Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Y)の新スクッテルダイト化合物を合成した。Eu,Gd,Tbの化合物は強磁性、Smの化合物は反強磁性を示す。Dy,Ho化合物は常磁性で、Fe系化合物と異なっている。YT_4P_<12>(T=Fe,Ru,Os)は3つとも超伝導を示し、その超伝導転移温度(T_c)はすでに研究されているLaT_4P_<12>(T=Fe,Ru,Os)のT_cよりも高い。16個の新スクッテルダイト化合物を合成し、4つの新超伝導体を発見した。さらに、2成分系のスクッテルダイト化合物であるCoP_3やRhP_3に、希土類元素を高圧下でドープした新物質開発にも成功している。
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