最終年度である平成17年度以下の成果を得た。 ・時間反転対称性を破るトリプレット超伝導体における自発磁化測定において、スクッテルダイト化合物PrOs_4Sb_<12>を試料に微小ホール素子を用いて測定を行い、ゼロ磁場付近に異常があること及び、その異常の空間スケールが10μm程度であることを明らかにした。 ・高温超伝導体の交差格子状態における磁束状態に関しては、これまで実現が期待されていたものの適当なパラメター領域が不明であった磁束レンズ効果の観測に成功した。70K付近の高温、10Oe程度の低密度のパンケーキ磁束の存在下において微小ホール素子を用いることにより最も顕著に観測された。このレンズ効果の実証を受け、磁気光学法による2次元的な磁束レンズの分布の仕方の可視化にも成功した。磁性ガーネット膜に関しては有機金属堆積法による作製を試み、磁気光学効果を持つ膜の作製に成功した。しかし、ひび割れ等の均一性の問題があることが明らかになり、焼成条件の再検討が必要なことが明らかとなった。 ・CaAlsiにおける上部臨界磁場の異常の発見に基づき、類似物質の開発を試みた。単結晶成長に成功したCaAl_2Si_2とCaAlSiを積層した層状化合物の作製を試みたが、安定な相が存在しないことが明らかになった。また、CaAlSiと類似物質であるCaGaSiの間を埋める混晶単結晶を作製した。上部臨界磁場の角度依存性の異常は20%程度のGa置換で消失するものの、c軸方向の超格子は少なくとも50%まで残ることが明らかになった。このことから、上部臨界磁場の異常と超格子には直接の関係がないことが明らかとなった。また、CaAlSiにおけるac面の磁気光学測定から、c軸に沿った大きなスケール(〜10μm)の不均一性があることが明らかとなった。一方、20%Ga置換した試料では、この不均一性が大幅に弱まっていることが分かった。これらのことから、c軸方向の欠陥が上部臨界磁場の異常に関係していると考えることができる。
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