研究課題
海洋地球研究船「みらい」の北極航海(2004年9月1目〜10月11日)に参加して、以下の観測を行った:気象ゾンデ観測装置を用いて、1日2回の連続観測。地上からの雲の分布は、ビデオカメラで自動記録。雲の3次元構造と分布についてはC-バンドドップラーレーダで、雲底高度はシーロメーターで連続観測。気象要素、海洋要素、海面からの乱流フラックスの連続観測。雲の鉛直微細構造と各種雲物理量については、千葉大のFM-CWミリ波レーダーと環境研の偏光ライダーとで同期観測。今回も係留気球観測を行ったが、エアロゾルの数濃度は海面から雲底(今回は1km)までほぼ値が一定であり、下層大気が良く混合されていることを示していた。今回の特筆事項は、凝結核の数濃度が海面水温および塩分濃度の水平勾配が大きい領域で高いことを見出した点である。また、粒径の大きなエアロゾルと小さなエアロゾルとは明らかに濃度が高い領域が異なっていることも重要な発見であった。従来の研究から、大きなエアロゾルは海塩粒子であることが分かっている。事実、大きなエアロゾルの数濃度と風速との間には良い相関が見られた。一方、凝結核は硫酸粒子である可能性が極めて高く、数濃度と風速との間には相関が見られない。また、海水温度によって上空の下層雲のレーダーエコー構造も異なっていた。今回の観測によって、北極海の中でエアロゾルが非一様に分布していること、大きな粒子と小さな粒子とで水平分布が異なること、これらの水平分布に海面水温や塩分濃度といった海面状況が影響していることが明らかとなった。これらの変動が、海洋の影響を受けやすい下層大気の成層構造と相俟って、北極層雲の放射特性、降水特性を変動させている可能性が示唆され、これらの成果を国内及び海外のシンポジウムで発表した。
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