研究課題
基盤研究(A)
(1)ガス圧式高温高圧変形試験機に併設して用いる地殻流体状態方程式実験装置を試作し、各種性能テストを実施した。圧力容器内に設置したミニピストン・シリンダーにNaCl水溶液を封入し、それに外部ラインからCO_2を注入し、そのPVTを連続的に計測するシステムである。PとVは約1%の精度で測定できたが、Tの精度向上が今後の課題である。(2)高速データ収録システムを併設したガス圧式高温高圧変形試験機を用い、固着すべり実験をおこなった。その結果、すべり面が摩擦発熱によって部分溶融を開始した直後に摩擦係数が急激に増加し、すべりが一時的に停止、または最終的に停止することを発見した。(3)固体圧式三軸変形試験の軸変位駆動系と温度・圧力計測系を整備・一新した。これで、モホ面付近に相当する高温高圧条件での変形実験が可能となり、変形中の差応力も精密に決定することに成功した。沈み込みスラブの脱水によってもたらされたH_2O流体がスラブや下部地殻の流動・破壊に与える影響を調べるため、石英岩を用いた予備実験を開始した。(4)流体やメルトの分布形態を支配する固液2面角の温度・圧力・組成依存性を統計熱力学的に解析した。理論計算モデルの結果は2元金属系の実験データと調和的であり、また地殻下部における石英-水系の濡れ挙動を定性的に説明することができた。(5)これまで提案されたほぼ全てのH2O-NaCl-CO2系地殻流体の状態方程式について、FLASHアルゴリズムを用いて相平衡解析用プログラムを作成した。また、状態方程式から直接得られる状態関数の温度微分によりエンタルピーを求め、この温度変化に基づき各状態方程式の精度の検討を行った。(6)電解質溶液を満たしたガラスビーズ焼結体の電気インピーダンス測定を行い、内部構造との対応を調べた。その結果、電気伝導度は連結した液相によって支配され、誘電率は連結していない液相によって支配されることがわかった。2つの情報をあわせることにより、液相形態について詳細なモデルをつくることが可能である。
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