研究課題
本年度は、タンデム型ディファレンシャルモビリティアナライザー(TDMA)装置、ハイボリュームエアサンプラー、デニューダーサンプラーなどを用いて、東京での夏の大気観測(7月から10月)を行い、採取した試料の分析を行った。以下にその研究成果の概要を述べる。1.エアロゾル試料中に低分子ジカルボン酸、ケトカルボン酸、ジカルボニルを測定し、シュウ酸が観測時間および期間を通して最も高い濃度を示す水溶性成分であることを確認した。またシュウ酸や他のジカルボン酸、ケト酸などの濃度は、早朝から昼にかけて急激に増加することを確認し(3-15倍)、夏の都市大気中では光化学反応による極性有機物の生成が明らかになった。2.有機炭素(OC)、黒色炭素、水溶性有機炭素(WSOC)の測定も行い、カルボン酸濃度との比較をした。その結果、ジカルボン酸が有機炭素に占める割合は1-3%で変動し正午に最大を示すことが解った。また、晴天の日にはOCに占めるWSOCの割合も昼にピークを示し、水溶性の有機物は他の有機物に比べて選択的に光化学的生成をしている実体が明らかになった。3.TDMAを用いて大気エアロゾルの吸湿特性を調べた。100ミクロンの大気粒子を第1段のDMAにて分級した後、粒子を加湿して第2段のDMAに導入し吸湿した粒子の成長率を測定した。その結果、昼間のエアロゾル粒子では粒子の成長が認められ吸湿性のエアロゾルが二次的に生成していることが確認できた。また、吸湿成長率は午前よりも午後に大きくなることがわかった。この結果は、より吸湿性に富む微粒子が光化学反応の進行とともに生成されており、それが午後にかけてより水溶性になっていることを示唆している。また吸湿特性は100nmよりも200nmサイズの粒子でより顕著であった。このことは二次有機エアロゾルの生成と関係があることを意味している。また、本年度には、これまで分析したエアロゾル中の有機成分の安定炭素同位体比の測定を行い、海洋エアロゾルに対してC3植物とC4植物からの寄与を議論し、またシュウ酸など低分子ジカルボン酸の安定炭素同位体比の測定を実施し大気中での光化学的変質のトレーサーとしての利用可能性について検討を行った。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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