研究概要 |
本研究課題では、ボラン及びその化合物が関与する2水素結合錯体の特異な幾何構造をレーザー分光学的に解明して、その電子構造や反応物性の特徴を明らかにすることを目標としている。特に、特殊な赤外・紫外レーザー2重共鳴分光法を駆使して、超音速分子線で生成する気相2水素結合クラスターの振動分光解析を行って、以下の点を明らかにする。 (1)2水素結合B-H.....H-Oの双方の水素伸縮振動(B-H振動とO-H振動)の分子力場が低下していることを実証し、2水素結合形成の完全な実験的証明を行う。 (2)通常の水素結合体では水素結合角は直線的であることとは全く対照的に、理論的に予測される2水素結合角<BHHは90°に近い。その実験的証拠を獲得して、電子状態の理論解析を行う。 (3)2水素結合錯体の光イオン化に際して発生する水素分子脱離反応機構を解明する。 ○気相2水素結合に関する総説論文=Chem. Phys.,283,193-207(2002). フェノールあるいはアニリンとボラン・アミンとの2水素結合体の構造に関して、2600〜4000cm^<-1>領域の特殊赤外分光計測法による振動分光計測と量子化学計算解析を行って、それらの分子間水素結合構造を明らかにした。 ○π-型水素結合の赤外分光研究=J. Phys. Chem.,106A,8554-8560(2002). フェノールの芳香環に水素結合したベンゼン、エチレン、アセチレンとのクラスターについて、それらの中性、およびカチオン状態における特殊赤外分光計測と量子化学理論計算解析を行って、それらのπ-型水素結合構造を解明した。 ○蛍光検出赤外分光法の開発=Chem. Phys. Letters,361,453-456(2002). 蛍光性物質についての新しい紫外・赤外レーザー2重共鳴振動分光法を開拓し、励起状態の分子振動準位観測法としてアニリンに適用した。
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