研究概要 |
水和電子を研究する新しい装置として,微小プローブからの高圧液体噴射装置を開発した.水和電子ダイナミクスを模する反応系として,NO二量体紫外光解離(NO)_2+hv→(NO)_2^*→NO(A^2Σ^+)+NO(X^2Π)に時間分解光電子画像観測法を適用し、解離機構を光電子エネルギー分布と光電子角度分布の時間発展から解明した。200〜235nmの間で励起波長を掃引した。解離経路は、223nmより長い励起波長ではエネルギー的に閉じるが,その閾値近傍における(NO)_2^*励起状態の緩和過程の励起波長依存性に関する測定も行った。5%NO/Ar試料気体を押し圧3気圧にてチャンバー内に導入し、1kHzフェムト秒解離光(200〜235nm)により二量体を励起後、励起二量体(NO)_2^*及び解離生成物NO(A^2Σ^+)を検出光(300nm)によりイオン化した.励起・イオン化パルス間の遅延時間を変えながら、発生するイオン・光電子の強度を測定すると共に、二次元位置敏感型検出器により光電子画像の時間発展を観測した。解離速度は波長が長くなるに従って滑らかに減少し、その傾向はNO(A)+NO(X)への解離経路が閉じる223nm以上でも連続的に続いた。これは、NO(A)を生成する解離経路は主ではなく、NO(X)+NO(X)への解離が優先的に進行していることを示唆した。光電子画像の時間発展では,励起直後に画像の中央部分に広く等方的に散乱する光電子が観測され,時間が経過するにつれその成分は消え、幅が狭く偏光方向に異方性のある輪が現れた。前者は価電子帯からのイオン化、後者は原子状Rydberg軌道からのイオン化である。従って、光電子画像の変化は、励起直後に占有される(NO)_2の価電子励起状態から、3s Rydberg状態への遷移を示す。この状態は、3sσ状態の解離生成物NO(A)へと漸近的に時間発展する。
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