研究概要 |
本研究では、フォトクロミック分子ユニットと遷移金属錯体とを共役結合したフォトクロミック錯体を創製し、そこで発現する新しい多重機能を探索,解明し、さらにそれらを界面に配列固定することによって、非従来型の分子スイッチ,分子メモリシステムを構築する研究を行った。その結果、単一波長光とレドックスで可逆な異性化を達成できる系として、アゾベンゼン共役トリスピリジンコバルト錯体系およびm-フェロセニルアゾベンゼン系を開発した。発光特性が異性体間で異なるフォトクロミック分子として、アゾベンゼン共役テルピリジン白金錯体系を開発した。また2,2'-ビピリジンの4位にアゾベンゼンを結合し、6,6'位をメチル基で置換した新規配位子、dmpABとビピリジン、Cuイオンを混合した系で、Cu(II)/Cu(I)のレドックス変化と単一紫外光源を用いた可逆的異性化が実現した。可逆なレドックスとそれに伴う構造変化と配位子交換を光異性化特性と連動した系として、アゾベンゼン共役ビス(ビピリジン)銅錯体系を開発した。プロトネーションと異性化が共役する系として、アゾ共役ジチオレン錯体系、アゾ共役カテコラト錯体系を開発した。界面配列体の研究として、アゾ共役フェロセン系とアゾベンゼン架橋ビステルピリジン錯体系の自己集合単分子膜の作製に成功した。また、フェロセニルアゾベンゼン誘導体の自己集合単分子膜の作製も行った。視覚の化学プロセスと類似した光信号を電気信号に変換する新しい系として、アゾベンゼンの光異性化に伴う大きな構造変化によって、錯形成能が大きく変化する新配位子oABをもつ銅錯体[Cu(oAB)_2]^+を創成した。また、異なる波長の光で3種の安定状態を変換することができる単分子系として、アゾベンゼン部位を両配位子上に持つジイミンジチオレン白金錯体を創成した。
|