剛体溶媒中での光応答型単分子磁石構築の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14204071
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 古賀 登 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (60161890)
• 研究分担者: 唐沢 悟 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (80315100) ; 秋田 健行 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (50294963)
• キーワード: ポリカルベン / 単分子磁石 / ジアゾーピリジル誘導体 / SQUID / ヘテロスピン系 / 剛体溶媒 / 分子磁性 / 光照射

研究概要

一分子で磁石と類似の磁気的性質を示す単分子磁石構築のためには、1)スピン反転に際して大きな活性化エネルギー(ΔE_a=|D・S^2|;D : zero磁場分裂パラメーター、s:スピン量子数)を持たせることと、2)長距離秩序を持たせないことが必須の条件である。一方、我々はこれまで、有機分子の2p不対電子と金属イオンの3d電子を組み合わせたヘテロスピン系を用い、分子磁性体構築を目指してきた。その研究結果に基づいて単分子磁石構築を考えたとき、新しい構築方法が浮かび上がった。即ち、"必要とされる大きなDとSをそれぞれ金属イオンと有機のスピンが担い、剛体溶媒による錯体分子の孤立化(長距離秩序を持たせない)を行う"という基本戦略である。我々のヘテロスビン系の最大の特徴はジアゾ基の光分解により発生するカルベンを有機のスピン源として用いることにより磁性機能に光応答性機能を付加した点にある。光照射後に発生するカルベンの分子内磁気的相互作用及ぴ金属イオンとの相互作用を考慮して設計された主なジアゾーピリジル誘導体(PMC)を合成した。光照射後発生するポリカルベンはそれぞれ基底多重項種であることが、光照射後の磁気測定により確認された。金属錯体としてM(hfac)_2;M=Cn(II),Ni(II),Co(II)を用いた。PMCとM(hfac)_2との錯体について極低温条件下、光照射前後のdc及びac磁気測定を行い、カルベンー金属集合体の磁気的性質を明らかにした。Co(hfac)_2との組み合わせにおいては、全てのPMCが単分子磁石様の磁気挙動を示し、2〜2000e(2K)の保持力を持つ磁化の履歴現象が観測され、更にΧ'及びΧ"の周波数依存性が観測された。

研究成果

• [文献書誌] Y.Takano, Y.Kitagawa, T.Onishi, Y.Yoshioka, K.Yamaguchi, N.Koga, H.Iwamura: "Theoretical Studies of Magnetic Interactions in Mn(II)(hfac)_2{di-(4-pyridyl)phenylcarbene} and Cu(II)(hfac)_2{di-(4-pyridyl)phenylcarbene}"J. Am. Chem. Soc.. 124(3). 450-461 (2002)
• [文献書誌] J.-P.Zhang, M.Suehiro, A.Sakane, S.Karasawa, T.Akita, N.Koga: "Theoretical Study on the Exchange Interaction between Metal Ion and Organic Radical through Pyridine, Bipyridine, and Terpyridine Ligands"Mol. Cryst. Liq. Cryst.. 376. 431-436 (2002)
• [文献書誌] H.Morikawa, S.Karasawa, N.Koga: "Magnetic Property after Irradiation of Tetrakis[4-(α-diazobenzyl) pyridine]copper(II)in a Frozen Solution"Appl. Magn. Reson.. 23,(4). 507-515 (2003)
• [文献書誌] S, Karasawa, N.Koga: "Magnetic behaviors after irradiation of assemblies consisting of bis(hexafluoroacetylacetonato)copper(II) and tetrapyridyl-pentadiazo compounds in frozen solutions"Polyhedron. (in press). (2003)
• [文献書誌] N.Koga, H.Iwamura: "Carbene Chemistry : from Fleeting Intermediates to Powerful Reagents, From High-spin Polycarbenes to Carbene-based Magnets"G. Bertrand(Ed.), FontisMedia S. A.. 22 (2002)