研究課題/領域番号 |
14204071
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古賀 登 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (60161890)
|
研究分担者 |
秋田 健行 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (50294963)
唐沢 悟 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助手 (80315100)
|
キーワード | 単分子磁石 / 磁化のヒステリシス / 1:4コバルト錯体 / 量子トンネル効果 / ニトロキシドラジカル / 交流磁化率 |
研究概要 |
一分子で磁石と類似の磁気的性質を示す単分子磁石構築のために、我々は、有機スピンと常磁性金属のスピンを持つヘテロスピン系を用いることを提唱してきた。今回、定量的な磁気測定の解析のため、安定なニトロキシドラジカルを有機のスピン源として用いた1:4コバルト錯体について詳細な研究を行った。X-線結晶構造解析により1:4コバルト錯体の分子構造を確認し、その結晶をMTHFに溶解してサンプルとして用いた。剛体溶媒中、極低温条件下、dc及びac磁気測定を行い、ニトロキシドラジカルーコバルト錯体の磁気的性質を調べた。ac磁気測定においては、遅い磁気緩和が観測され、X"磁化率の周波数依存性の温度変化よりスピン反転に要する活性化エネルギーは50Kと見積もることができた。また、その活性化エネルギーは、ニトロキシドラジカルーコバルト錯体の軸配位子に依存することが明らかになった。このことは、大きな活性化エネルギーを持つ単分子磁石構築において有用な知見である。また、詳細なac磁気測定により、対称なCole-Coleプロットが得られ、単緩和過程が示唆された。dc磁気測定においては、単分子磁石に特徴的な温度に依存した保持力を持つ磁化のヒステリシスが観測された。更に、配位子場モデルを用いた理論計算により、dc磁気測定の結果を最適化し、活性化エネルギーを60Kと見積もることができた。acの磁気測定により得られた活性化エネルギーとの差は、量子トンネル効果によるものであると推察された。
|