研究課題
基盤研究(A)
植物は害虫に食われたとき、害虫の種特異的な匂いを食害誘導的に生産・放出する。この「匂い(揮発性の化学情報)」は食害している害虫特異的な天敵を誘引する機能がある。この現象は植物の「誘導的間接防衛戦略」と位置づけられている。本研究では、「誘導的間接防衛戦略」をさらに拡張し、植食者の利用による植物の質的・形態的変化が、昆虫群集の相互作用ネットワークの多様化に貢献するという「間接相互作用網」の考え方を提唱し、これによって植物種間の相互関係が昆虫群集の成立に果たす間接効果を解明するアプローチを確立した。また、植物が食害を受けたときに天敵を呼ぶためのシグナル物質が、近くの未加害の植物からも発せられるという事実がある。そのメカニズムの分子生物学的な視点からの解明をおこなった。エクオリン発光をもとに匂いの暴露による植物細胞の応答を計測する実験系を確立した。今後、さまざまな条件での細胞応答を計測する予定である。未加害植物からの匂い放出が、(1)吸着過程と(2)priming過程の2つからなることを明らかにした。さらに部位特異的な反応も認めた。また、植物間コミュニケーションの新たな視点として、(1)花外蜜腺よりの蜜の増加を認めた、(2)匂いの暴露で、シロイヌナズナの根の形態の変化、および腺毛の増加を検証した。植物間相互作用に働く誘導シグナルが将来の危険を避けるための未加害植物の防衛戦略であるという仮説を理論的に検討するために、植物間コミュニケーションのモデルの基礎となる植物の最適戦略モデルの構築を行った。
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