本研究の目的は、メダカ及びマウスを用いて、脊椎動物における排卵機構を解明することである。初年度(平成14年度)に実施した研究により、膜結合型マトリクスメタロプロテアーゼであるMT2-MMPがメダカ排卵において重要な役割を果たしていることが示されたことから、本年度においては、メダカを用いて、さらに排卵機構の詳細を明らかにすることを目指した。また、マウスにおいてもMT2-MMPが排卵に関わる可能性があるかどうかについて検討した。その結果、以下の研究成果が得られた。 (1)メダカ卵巣を用いた研究 MT2-MMPは、排卵時期に不活性前駆体タンパク質として合成され、速やかに活性型に変換される。この活性化のプロセスに関わる分子の探索を試みた。その結果、メダカ卵巣にフユーリン及びPC2遺伝子が発現していることが明らかになった。しかし、フユーリン及びPC2遺伝子を最も強く発現している細胞は卵細胞であるという新知見が得られた。 排卵機構に関する詳細な解析を進めた結果、MT2-MMPの他にgelatinase Bの関与が明らかになった。 (2)マウス卵巣を用いた研究 初年度には、メダカ同様、MT2-MMP遺伝子がマウス卵巣の顆粒膜細胞に発現することを示唆す結果が得られていた。本年度では、これを確認する実験を行った。幼若雌マウスへのホルモン処理により、排卵から黄体化の時期に遺伝子発現が誘導されたことから、MT2-MMPの生理機能として、排卵のみならず黄体化における関与も示唆された。本年度の実施目標の一つとしていたMT2-MMP遺伝子のプロモータ解析は、メダカの排卵解析に重点をおいたため実施できなかった。
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