本年度は、1.視葉板シナプス結合様式の解析、2.モンシロチョウでの比較研究、3.混色現象の行動学的解析を実施した。 1.視葉板シナプス結合様式の解析 アゲハ複眼では、紫外、紫、青、緑、赤、広帯域の6種の視細胞が3タイプの個眼に特定の組合せで分布する。本年度は視覚第一次中枢における視細胞間結合を電子顕微鏡レベルの組織学で詳細に調べ、個眼タイプごとに結合パターンが異なることを証明した。 2.比較生理学的研究:モンシロチョウ複眼性差の生理学的および分子生物学的研究 昨年度に引き続き、モンシロチョウにおける比較生理学的分子生物学的研究を行った。モンシロチョウ複眼から、3種の短波長受容型、1種類の長波長受容型オプシンcDNAをクローニング、すべてのオプシンについてmRNAの網膜内分布をin situ hybridization法で調べた。結果、生理学的および解剖学的に同定されていた3タイプの個眼の存在が追認された。生理学的には、二峰性青受容細胞は♂特異的、紫受容細胞は♀特異的であることが証明されていたが、これらの細胞にはいずれも紫受容型視物質であるPrVが発現していることが分かった。分光感度の差異は、♂の複眼にのみ存在する蛍光色素のフィルター効果で説明される。 3.混色現象の行動学〜パイロット実験〜 アゲハ複眼には6種の視細胞があり、これを色覚に用いている。6種の視細胞のうちどれが色覚に用いられているかを行動学的に検証するためのパイロット実験を行った。分光器および干渉フィルターを用いて3種類の単色光を独立に発生させる装置を作成、2つの単色光で混色をつくって今ひとつの単色光と並べて提示、アゲハに識別させる実験系を構築し、パイロット実験を行った。
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