ヒトを含む霊長類におけるロコモーションの発達・加齢

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14204083
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 濱田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978)
• 研究分担者: 中野 良彦 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 講師 (50217808) ; 木村 賛 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (20161565) ; 石田 英實 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (60027480) ; 西澤 哲 東京都老人総合研究所, 運動機能部門, 研究員 (00270661) ; 足立 和隆 筑波大学, 体育科学系, 講師 (70221041)
• キーワード: ロコモーション / 霊長類 / 発達 / 加齢 / 運動力学 / 計算機シミュレーション / 筋骨格系 / 生活の質(QOL)

研究概要

昨年までに構築したシステムに従いデータを収集するとともに、新たにいくつかの項目を追加して研究を行なった。I.ヒト対象研究。1)歩行および階段昇降実験:重力加速度補正用ビデオ撮影を行い、若年者および高齢者の身体各部の加速度計計測を行った。2)立位姿勢維持実験とシミュレーション:従来のシミュレーションモデルでは歩行・立位の安定性が悪い。神経系の伝達特性の時間的遅れと前庭系モデルを付加したモデルを構築し、幼児と成人を対象に床反力計による重心位置動揺を検討した。3)幼児の歩行発達研究:歩行が可能となった後、経済的な歩行が可能になる過程を動作解析と床反力計によって追跡し、1.5歳まで経済性は急速に増加し、そこからゆっくりと増加するようこと等を見出した。4)筋力トレーニングの高齢者歩行への効果:適切な機器の利用で安全に高齢者の筋力アップが可能である。コンディショニング・筋力増強トレーニング・機能的トレーニングの3段階を経て、生活に必要な運動能力を取り戻し、イス座位から立ち上がり3m先地点まで歩いて戻ってくるTimed Up & Go試行や最大歩行速度などに顕著な改善を見る。
II.ヒト以外の霊長類対象研究。1)四肢骨格の最大長と関節部幅の相対成長:胎児・幼児マカク類液浸標本のX線写真により相対成長を解析し、部位により優・劣相対成長が示された。2)チンパンジー木登り運動の発達:急速に成長している個体で、木登りの運動学的発達を検討し、同種に特有の足首底屈による推進と上肢の振上げ幅の増大を認めた。3)ニホンザルの運動年令変化:20歳未満と以上の2グループ間で位置行動頻度を比較し、高齢グループでは個体間交渉の減少とともに、移動運動頻度が顕著に減少する。宮崎県幸島で年令既知個体を対象に平地四足歩行のビデオ撮影と三次元運動解析を行った。脊柱・四肢骨格の年令変化をX線写真と骨密度測定によって調査し、関節部骨間距離の狭小化、Osteoarthritis、その他の骨格老化症状が相対的にヒトよりずっと若く(約10歳)開始し、約16歳より多くの個体に観察されることを見出した。

研究成果

• [文献書誌] Rae, TC: "Clinal variation of maxillary sinus volume in Japanese macaques"American Journal of Primatology. 59. 153-158 (2003)
• [文献書誌] Nishimura, T: "A case report on a new type of stick use by wild chimpanzees"Primates. 44(2). 199-201 (2003)
• [文献書誌] Gunji, H: "Extraordinary Low Bone Mineral Density in an old female chimpanzee(Pan troglodytes schweinfurthii)from the Mahale Mountains National Park"Primates. 44(2). 145-149 (2003)
• [文献書誌] Kikuchi, Y: "Mechanical properties of bone tissue in chimpanzees, humans, and Japanese macaques"Primates. 44(2). 151-155 (2003)
• [文献書誌] Hamada, Y: "A Longitudinal Study on Hand and Wrist Skeletal Maturation in Chimpanzees(Pan troglodytes), with Emphasis on Growth in Linear Dimensions"Primates. 44. 259-271 (2003)
• [文献書誌] Hamada, Y: "Seasonal variation in the body fat of Japanese macaques Macaca fuscata"Mammal Study. 28. 79-88 (2003)
• [文献書誌] Nakatsukasa, M.: "Energetic costs of bipedal and quadrupedal walking in Japanese macaques"American Journal Physical Anthropology. In press. (2003)
• [文献書誌] 濱田 穣: "ケニア、クレータ湖のクロシロコロブスの位置的行動特徴"日本アフリカ学会第40回学術大会抄録集. 104 (2003)
• [文献書誌] 濱田 穣: "ニホンザル(Macaca fuscata)における精巣サイズと乳首サイズの年齢変化と季節性:ニホンザルの二次性徴発現"第19回日本霊長類学会大会抄録集. 36 (2003)
• [文献書誌] 荻原直道: "先天的に前腕を失ったニホンザルが行う二足歩行運動の分析"第19回日本霊長類学会大会抄録集. 46 (2003)
• [文献書誌] 高橋知子: "飼育下ニホンザル群に見られる肥満"第19回日本霊長類学会大会抄録集. 46 (2003)
• [文献書誌] 濱田 穣: "タイ東北部のアカゲザルに見られる形態学的特徴"第57回日本人類学会大会抄録集. 36 (2003)
• [文献書誌] Kimura, T: "Longitudinal study on the development of bipedal walking in humans and chimpanzees"Anthropological Science. 111(4). 401 (2003)
• [文献書誌] Hirashima, M: "Counteractive relationship between the interaction torque and muscle torque at the wrist is predestined in ball-throwing"Journal of Neurophysiology. 90. 1449-1463 (2003)
• [文献書誌] 横井孝志: "立ち座り動作における動作・心理特性にもとづいた空間寸法の評価"人間工学. 39(4). 145-152 (2003)
• [文献書誌] 横井孝志: "移動運動における力学的仕事有効利用性指数と移動速度との相関"バイオメカニクス研究. 7(2). 101-108 (2003)
• [文献書誌] Miyashita, K: "Evolutionary generation of human-like bipedal locomotion"Mechatronics. 13. 791-807 (2004)
• [文献書誌] Hase, K.: "Human gait simulation with a neuro-musculo-skeletal model and evolutionary computation"Journal of Visualization and Computer Animation. 14. 73-92 (2003)
• [文献書誌] 大日方五郎: "筋骨格系の冗長自由度の運動学的モデリングと医療福祉応用"バイオメカニズム学会誌. 27(4). 180-185 (2003)
• [文献書誌] 長谷和徳: "歩行シミュレーションから見た歩行の安定性"第16回中国ブロック理学療法士学会学会誌. 3-4 (2003)
• [文献書誌] Kim, C.S.: "A simulation study of real-time PD control in FES cycling"Proc. 8th Annual Conference of the International Functional Electrical Stimulation Society. 215-220 (2003)
• [文献書誌] 尾原光裕: "外界情報を取り入れた3次元段差歩行シミュレーション"第3回福祉工学シンポジウム講演論文集. 93-96 (2003)
• [文献書誌] 足立憲正: "歩行の3次元シミュレーション"生活支援工学系学会連合大会講演予稿集. 95 (2003)